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日本の海苔って

日本の海苔のはじめ

 日本の文献で一番最初に「海苔」について書かれていたのは、大砲元年(701年)に制定された実は日本最初の法律「大宝律令」。その中の「租庸調(そようちょう:現在の税金)」の項目の「調(ちょう)」として「紫菜(むらさきのり)」がありました。

 

 租庸調とは、中国や朝鮮から伝わった税制です。

  • 租(そ):田んぼで採れたお米を税として納めていました。
  • 庸(よう):都での労働で納める税。労働の代わりに布や塩、お米を納める場合もありました。
  • 調(ちょう):基本的に繊維製品を納める税。繊維製品が無い地域では特産品を納めることもあり、今回の海苔など海藻類も含まれます。

 元々、島国の日本においては縄文時代から海苔を食用にしていたという説が有力です。そんな長い歴史のある「海苔」についてご紹介します。

 

奈良・平安宮跡の朱雀門

 

海苔の旬

 一年中出回っている海苔ですが、その旬は11月~3月中旬ごろまで、そのおよそ4か月で一年分の海苔を収穫しています。

 海苔を摘む時期ごとに「初摘み」「二番摘み」「三番摘み」と呼びます

 

  • 初摘み:11月~12月に最初に摘まれる海苔で、「新海苔」とも呼ばれます。特徴として柔らかく、香り高く、美味しいと人気の海苔です。
  • 二番摘み:初摘みで1度摘んだ後に、また生えてきた海苔芽を摘んだもの。初摘みに比べたらしっかりとした歯ごたえがあるのが特徴。
  • 三番摘み:3月頃の最後に摘まれた海苔。幾度と摘まれた影響で、繊維質がしっかりしていますが、その分生海苔で食べると歯ごたえがあって美味しい海苔。収穫のタイミングによっては4番摘みもあります。

 ちなみに海苔には4つの状態があります。

  1. 生海苔:収穫直後の状態。洗浄して海苔の佃煮にしたり、海苔の天ぷらに使われます。
  2. 乾海苔:生海苔を洗浄、整形して干した状態、現在は「焼海苔」にしてから出回ることがほとんどですが、以前は乾海苔が主流でした。
  3. 焼海苔:乾海苔の表面を炙った物。炙った直後が最も香りが立つのと、炙ると酸化が進むので、保存技術が未熟だった頃はあまり出回っていませんでしたが、保存技術の進歩によって現在は主流になっている海苔です。
  4. 味付け海苔:焼海苔に醤油やみりんなどで味付けした物。

焼海苔

 

海苔の種類

 海藻は大きく分けて「紅藻類(こうそうるい)」「緑藻類(りょくそうるい)」「褐藻類(かっそうるい)」の3種類からなり、海苔はその内の紅藻類のアマノリ属から作られます。30種類弱あるアマノリ属の中で代表的な3種をご紹介します。

 

スサビノリ(荒び海苔)

 現在、海苔養殖において主流の海苔。元々は福島県北以上の太平洋側沿岸で自生していたスサビノリですが、現在は全国の海苔養殖場で使われています。スサビノリで作る海苔は色が濃く、海苔は色が黒ければ黒いほど良い物と言われていて以前は高級品でしたが、現在は養殖技術の向上により一般的な海苔になりました。

 スサビノリの語源ははっきりしていませんが、北海道大学の遠藤吉三郎氏の報告書にあった採れた地名が由来という説が有力です。

 

それは北海道大学教授だった遠藤吉三郎さんが明治41年(1908)に「水産調査報文 第一 函館支廳管内ニ於ケル海苔業ノ將來」という標題で出版した報告書です(図1)。この報告書で遠藤さんは「北海道ノ海苔ノ種類品質並ニ製品トシテノ價値」という項に、「第一 すさびのり」として「すさびのりトハ余カ今回新タニ命名セル所ニシテ本種ノ産地タル函館尻澤邊ノ地名ヨリ取レルナリ本種ハ・・・」(太字は筆者指定)と書いています(図2)。遠藤さんが北海道函館地方の尻澤邊というところで発見したノリに「すさびのり」という名をつけたのです。すなわち、スサビノリという名(和名)をつけたのは遠藤さんであり、「スサビ」は函館の「尻澤邊」(尻沢辺)という地名に由来するのです。また、遠藤さんの著書「海産植物學」(博文館、1911)を開いてみると、「すさびのり」の解説の中に「・・・今函館尻澤邊ニ於ケル其發育の状ヲ検スルニ・・・」(太字は筆者指定)との記述があります。

参考「スサビノリの「スサビ」の由来」

 

 「尻澤邊(しりさわべ)」→「しりさべ」→「しさべ」→「すさべ」→「すさび」となったと考えられます。なおスサビノリの「荒び」は当て字だと考えられます。

 

アサクサノリ(浅草海苔)

 アサクサノリの名前の由来は諸説あり「隅田川河口辺りで採れたから(浅草辺り)」「浅草和紙の製法と、乾海苔の作り方が同じだから」「浅草寺で販売されていたから」などがありますが、1番最初の採れた場所由来が有力な説です。

 以前は海苔と言えばアサクサノリと言われるほど主流でしたが、今は有明海など一部の場所でしか養殖されていません。特徴として乾海苔時は少し赤みを帯びていますが、焼海苔にすると鮮やかな緑に変化します。スサビノリより柔らかくうま味が強い反面、傷みやすく病気になり易く養殖が難しい為、収穫量も少ないので、高級品となっています。

 

ウップルイノリ(十六島海苔)

 島根県出雲市十六島地区が代表的な産地だった為、この名前になりました。この海苔が海岸線の岩場に自生している場合のみを「岩海苔」と呼んでいます。ただし養殖した場合は「岩海苔」の名称は使えません。

 ウップルイノリは繊維がハッキリしていますが、水に戻すと非常に柔らかく、汁物や蕎麦やうどんの付け合わせとして最高です。

 

青のりも海苔?

 青のりも海藻由来の食品ですが、海苔(アマノリ属)が属する「紅藻類」ではなく、「緑藻類」に属する「アオノリ・アオサ・ヒトエグサ」の総称です。つまり海苔という言葉が使われていますが、青のりと海苔は別の海藻類です。またアオノリ・アオサ・ヒトエグサはよく似た3種類ですが、それぞれ別々の海藻です。

 

アオノリ

 アオサ科アオサ属アオノリ。海水と淡水が混ざる汽水域に生息する糸状の藻類で、香り高く。四万十川(高知県)、吉野川(高知県と徳島県)で採れるスジアオノリが最高級品として取り扱われています。

 

アオサ

 アオサ科アオサ属アオサ。波が穏やかな海岸の浅い海の岩場に生息していますが、海を浮遊した状態でも生息できます。

 

ヒトエグサ

 ヒトエグサ科ヒトエグサ属ヒトエグサの海藻。上記2種とは科や属が異なりますが、「青のり」「あおさ」とも呼ばれます。沖縄では「アーサー」と呼ばれ沖縄料理に使われています。

 

 

韓国のりとの違いは?

 実は韓国のりに使われている海苔は岩海苔の一種であるオニアマノリやイチマツノリなどが使われている。これらの海苔は成型時にどうしても穴が開いてしまう為、日本ではそのまま乾燥させて「岩海苔」として販売されていることが多い。これらの海苔を成型しごま油と塩で味付けした物が一般的な「韓国のり」です。

 

韓国のり

 

まとめ

 今回は日本で初めて海苔について書かれた書物(法律)についてや、主流の海苔の種類、青のりと海苔の違い、韓国のりについてご紹介しました。実は日本の「海苔の日」は大宝律令由来だったりします。大宝律令が制定施行したのが大宝2年(702年)旧暦1月1日だったことに即し、昭和41年(1966年)に全国海苔貝類漁業協同組合連合会が新暦に直して2月6日を「海苔の日」にしました。

 悠久の過去から現在に至るまで、日本人に愛されてきた「海苔」。おにぎり持って行楽に出かけましょう。

 

公園でおにぎり

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