ぶどうの驚くべき旅:古代から現代へ、その健康効果はどのように私たちを変えたのか?
ぶどうの発祥
秋を代表する果物「ぶどう」、実は日本にも古くから伝来して栽培されており(諸説あり)長く愛されている果物だったりします。その成り立ちやその健康効果について今回はご紹介します。意外な効果に食品アレルギーの防止もありました。
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ブドウ栽培の伝わり方
ぶどうの発祥は紀元前8000年頃の中近東と言われています。その後紀元前5000年頃に書かれた「ギルガメッシュ叙事詩」にワインについての記述があるので、その頃にはワインが作れるほど豊富なブドウが栽培されていたことが推測できます。
その後、紀元前3000年頃にはワインと共にエジプトにも伝わったみたいで、その時代の墳墓にブドウを一緒に埋葬した形跡が残っていました。紀元前2000年ごろにはエーゲ海を渡り、紀元前1300年ごろにギリシアにワイン技術と共に渡って、そのままヨーロッパに広く伝播していきました。
東方にはシルクロードを経て紀元前1世紀頃に中国の漢王朝に伝わったと言われています。
ブドウ栽培が広まったわけ
まず最大の理由はもちろん「食料」とすること、生のまま食べても良く、干し葡萄にすることによって長期保存をすることもでき、携帯して移動中の食料にすることもできました。またワインにすることによって、ワインに含まれるアルコールによって保存性が増すことと、古代において現代の様な上下水道が完備されていなかった為、安全な水分を確保する為に、水に加えてアルコール殺菌をする側面もありました。
なお、実はそれはビールにも当てはまることで、ワインはその希少性から上流階級や王族が主に飲み、庶民はビールで水の安全性を確保してました。
また、紀元1世紀キリスト教が始まり、その教義の中に「赤ワインがキリストの血である」という教えから、その後のキリスト教の隆盛により全国の修道院などでワインを作る為のぶどう畑が盛んに研究されていたのも、ブドウ栽培が広まった大きな要因です。
国産ブドウの歴史
自生していたぶどう
日本には元々「山葡萄」が植生しており、縄文時代の遺跡である「三内丸山遺跡」からその種が出土していることから、山葡萄を採取して食料にしていたと考えられています。
栽培を始まり
ブドウ栽培については2つの説があります。
一つ目は、奈良時代に唐(中国)から伝来したという説。716年(養老2年)に高僧の行基(ぎょうき)が甲斐の国(現在の山梨県)へ修業の旅の途中に立ち寄った際に、夢の中にぶどうを持った薬師如来が現れ、その姿を掘り出した薬師如来像が現在も柏尾山大善寺にあります。その後、行基が当時は薬として伝来していたぶどうを勝沼地区に伝えて栽培が始まったという説。
二つ目は、平安時代の1186年(文治2年)に、やはり甲斐の国で、雨宮勘解由(あまみやかげゆ)が山中で山葡萄と異なる珍しい果樹を見つけてそれを栽培したのが、ブドウ栽培の始まりという説もあります。
ブドウの健康効果
ぶどうにはブドウ糖、ポリフェノール、ビタミンB群、カリウム、「リンゴ酸」や「酒石酸」のような有機酸など様々な健康に良い成分が含まれており、様々な健康効果が期待できます。
疲労回復
ぶどうに含まれるぶどう糖や果糖(フルクトース)は吸収されると素早くエネルギーに変わってくれるので、疲労の軽減効果が期待できます。
脳のエネルギー源
ぶどう糖や果糖は直接脳のエネルギーとして働くので、脳を活発にしてくれます。
高血圧の予防
ぶどうに含まれるカリウムは、体内で過剰になっている塩分由来のナトリウムを排出してくれる為、血管内の濃度が下がり、結果、濃度を一定に保つ為に水分も排出されて、それに伴って血圧が下がります。
美肌効果
ぶどうには様々なポリフェノールが皮や種子に多く含まれており、ポリフェノールの1種の「レスベラトロール」にはコラーゲンを分解してしまう「コラゲナーゼ」の働きを抑制し、コラーゲンが残るので皮膚を若々しく保ってくれることが期待できます。また2012年に山梨大学医学部の中尾篤人教授らの研究チームが、このレスベラトロールに食物アレルギーを抑制する効果があることを発表しました。
参照「山梨大学 「食物アレルギー発祥抑制効果=赤ワイン成分、マウス実験で-山梨大研究チーム」
眼精疲労予防
ぶどうに含まれるポリフェノールの一つに「アントシアニン」があります。アントシアニンは青紫色の色素成分で、強い抗酸化効果があり、眼精疲労はもちろんのこと、加齢による老眼や白内障、視力の低下などを予防する効果が期待できます。
抗菌作用
ぶどうに含まれるリンゴ酸や酒石酸などの有機酸は、食品の酸味を示す物質で、食品が酸化するのを防止したり、抗菌性が期待される物質です。
まとめ
ぶどうは、その起源が紀元前8000年頃の中近東にまで遡ることからもわかるように、長い歴史と豊かな文化的遺産を持つ果物です。時代を超え、多くの文明において食料、保存食、そして優れたワインの原料として重宝されてきました。
日本への伝来は、奈良時代から平安時代にかけてのものとされ、自生する山葡萄から栽培品種への移行は、日本の農業史における重要な一歩を示しています。
ぶどうに含まれる多様な栄養成分は、疲労回復から脳の活性化、高血圧の予防、美肌効果、眼精疲労の予防、さらには抗菌作用に至るまで、多方面での健康効果をもたらします。これらの特性は、ぶどうが単なる美味しい果物以上の価値を持つことを示し、その歴史的、栄養学的重要性を強調しています。
今後もぶどうは、私たちの食文化や健康維持において欠かせない役割を果たし続けることでしょう。このような多様な側面を持つぶどうの魅力は、その深い歴史と共に、未来へと受け継がれていく価値ある宝物です。
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