シジミの栄養パワーで健康促進?睡眠改善から美肌、貧血予防までの驚き効果!
シジミの栄養素の概要とその働き
シジミは、その小さな身に、驚くべき量の栄養素を秘めた貝類です。日本の食文化に深く根差し、貴重な栄養源として愛されてきたシジミは、その栄養価の高さから夏バテ防止にウナギと共に「土用シジミ」とも称され土用丑の日に食されてきました。
昔は、淡水にいるマシジミ(真しじみ)が代表的なシジミでしたが、農業の近代化にともない、農薬の使用などでマシジミの数は減り、現在は汽水に生息するヤマトシジミが一般的なシジミとなっています。
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この章では、シジミに豊富に含まれる栄養素、特に鉄分、ビタミンB12、ビタミンB2、オルニチンなどの成分に焦点を当て、これらが私たちの健康にどのように寄与するかを探ります。
しじみの鉄分
鉄分は、シジミにおける最も注目すべき栄養素の一つです。シジミに含まれる鉄分は、赤血球の形成に不可欠で、酸素を全身の細胞に届けるのを助けます。シジミに含まれる鉄分は、特に「ヘム鉄」として知られており、植物性の鉄分よりも収率が高いことから、貧血予防や疲労回復に効果的です。
食事摂取基準による1日に必要な 鉄分は(平均)
- 成人男性:7.5mg
- 12~17歳の男性:10.0mg
- 18~74歳の男性:7.5mg
- 75歳以上の男性:7.0mg
- 10~14歳の女性(月経あり):12.0mg
- 成人女性(月経あり):10.5mg
総じて、男性よりも女性の方が30~40%多く鉄分を必要としています。男性でシジミ90g程度、女性でシジミ145g程度で1日の必要鉄分を摂取することが可能ですが、1つの食物から摂取するよりも様々な食材からバランスよく摂ることが健康の為には重要です。
しじみのビタミンB12
シジミに含まれるビタミンB12は、神経系の健康維持に欠かず、血液を生成する造血作用もある水溶性ビタミンで別名「赤いビタミン」とも呼ばれています。シジミにはこのビタミンB12が豊富に含まれた優れた栄養源です。またビタミンB12は睡眠ホルモンであるメラトニンの生成を助ける作用があり、睡眠の質の向上や疲労感の軽減に役立つことが知られています。ビタミンB12は植物には余り含まれていないので、シジミなどの動物性の栄養源から摂取する必要があります。
食事摂取基準では、ビタミンB12の一日の摂取の推奨量は18歳以上の男女とも2.4㎍です。水溶性のビタミンなので過剰に摂取しても体内に留まって副作用を及ぼす可能性はありません。(しじみ100g当たりのビタミンB12は68μg)
しじみのビタミンB2
皮膚や髪、爪の健康を支えるビタミンB2も、シジミには豊富に含まれています。ビタミンB2は、皮膚、髪、爪の健康に大きく関わる重要な栄養素です。ビタミンB2は、細胞の成長や再生を促進し、皮膚や粘膜を保護する役割を担います。これにより、皮膚トラブルや肌荒れを防ぎ、健康な肌を保つのに役立ちます。ビタミンB2が欠乏すると、皮膚代謝の活発な口内の荒れ(口内炎)が引き起こされたりします。
またビタミンB2は脂質をエネルギーに変換する代謝に関わっています。この為、ビタミンB2が不足すると、脂質のエネルギー代謝が滞り疲労感を強く感じるようになります。
日本の食事摂取基準では、ビタミンB2は成人男性の場合1.3~1.6mg/日、成人女性の場合1.0~1.2mg/日が推奨されています。摂取量は年齢や性別、妊娠などによって異なります。(しじみ100g当たりのビタミンB2は0.44mg)
シジミは豊富なビタミンB2によって、美容と健康の両方に対して重要な役割を担っています。
しじみのオルニチン
オルニチンはシジミに含まれている遊離アミノ酸の一種です。このオルニチンは、肝臓の健康を支え、疲労回復や美肌効果をもたらす重要な成分です。
シジミに含まれるオルニチンには、ストレスによって出てくるホルモン「コルチゾール」分泌の抑制する効果があり、これにより精神的な疲労感を軽減します。またオルニチンは成長ホルモンにも働きかけ分泌を促し、肌の新陳代謝を促進して美肌に寄与します。さらに、体内で発生する毒素のアンモニアを解毒する作用があり、これによって体内の毒素が減りエネルギー代謝を促進し、疲労回復を早める効果もあります
シジミに含まれるこれらの栄養素は、私たちの体にとって多くのメリットをもたらしますが、これらの栄養素を最大限に活用するためには、シジミの栄養素を逃さず食べる食事法、効果的な調理法、適切な保存方法、そしてシジミの旬を理解することが重要です。それぞれの要素が、シジミの栄養素を保ちながら、その恩恵を享受するための鍵となります。
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維総量 | 炭水化物 |
54kcal | 86g | 7.5g | 1.4g | 0g | 4.5g |
ナトリウム | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 鉄 |
180mg | 83mg | 240mg | 10mg | 120mg | 8.3mg |
鉄 | 亜鉛 | 銅 | マンガン | β−カロテン | ビタミンD |
8.3mg | 2.3mg | 0.41mg | 2.78mg | 97μg | 0.2μg |
ビタミンK | ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | ビタミンB12 |
2μg | 0.02mg | 0.44mg | 1.5mg | 0.1mg | 68μg |
葉酸 | パントテン酸 | ビオチン | ビタミンC | アルコール | 食塩相当量 |
26μg | 0.53 | -μg | 2mg | -μg | 0.4g |
しじみ(生)栄養成分100g当たり【出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年】より
シジミの健康効果:内側からの強化
シジミは、その小さな体に多くの栄養素を詰め込んだ驚異の食材です。特に、貧血予防、肝臓サポート、そして妊娠中の女性にとっての安全性において顕著な効果を発揮します。
貧血予防
シジミには吸収が良いヘム鉄分が豊富に含まれており、これが貧血予防に非常に有効です。また赤いビタミンとも呼ばれるビタミンB12も豊富で、これによって貧血や神経障害の予防に重要な役割を果たし、慢性疲労や体力低下を防ぎます。シジミは他の貝類と比較しても、鉄分やビタミンB12が特に豊富であることが知られています。
肝臓サポート
シジミに含まれる遊離アミノ酸のアラニンは、アルコールの解毒を助け、脂肪肝の予防にも効果が期待されます。また、シジミに含まれる同じく遊離アミノ酸のオルニチンが体内の毒素であるアンモニアの代謝を促進してくれて肝機能のサポートに寄与することも知られています。
妊娠中の安全性
妊娠中の女性は多種多様な栄養素が必要となっています。その中でもシジミは安全な食材であり、特に妊娠中の貧血予防に役立ちます。シジミの味噌汁は、鉄分やビタミンB群を簡単に摂取できるため、妊娠中の食事におすすめです。ただし、妊娠中は特定の食材だけを摂取するのは危険です。全体的な食事バランスを考慮して幅広い食材から栄養を摂取することが大切です。
シジミはその栄養価の高さから、日々の食事に取り入れやすく、多くの健康効果を期待できる食材です。これらの特性を活かし、バランスの良い食生活に役立てることが推奨されます
シジミとアレルギー:食べる際の注意点
体質や体調により貝類でアレルギーが出る場合があります。ただ比較的しじみはアレルギーが出にくいですが、まれに起こります。
シジミアレルギーの原因と症状
シジミを摂取することによって、体がシジミのアレルゲンに反応して発症します。一般的な症状には、吐き気、じんましん、呼吸困難などがあります。特に、口の周りが赤く腫れたり、喉の奥がイガイガする、下痢や嘔吐、腹痛、全身に蕁麻疹が出るなどの症状が見られる場合、アレルギーが疑われます。重度の場合、アナフィラキシーの危険もあるため注意が必要です
実はアレルギー予防効果もある
前述のシジミアレルギーが無い場合、他の食品によるアレルギー反応を予防する効果があるとされています。これは、シジミに含まれるメチオニンというアミノ酸がアレルギー反応を引き起こすヒスタミンの濃度を下げる働きをするためです。しかし、シジミアレルギーが既にある場合は、摂取しないように注意が必要です
赤ん坊の離乳食については
赤ちゃんや小さな子供に、しじみを与える場合は特に慎重になる必要があります。離乳食としては生後一か月を過ぎてから与え始めることが推奨されています。しっかりと加熱して、噛む力が十分にある1歳ごろから与えるのが良いでしょう。また食後に口の中や唇の周りに腫れなどの異常がないかを確認する必要があります。
赤ん坊、子供にしろ、成人にしろ、しじみに限らず食物を摂取後に体調に異変を感じた場合は、速やかに医療機関に連絡し、指示を受け、早急に処置を受けるようにしてください。
しじみの調理法:栄養を最大限に活かす
シジミは、その豊富な栄養素により、健康促進に非常に有効な食品です。シジミに含まれる体内で合成できない必須アミノ酸がバランスよく含まれています。必須アミノ酸は9種類あり、しじみには、そのすべての必須アミノ酸が含まれています。このバランスを示す指標である「アミノ酸スコア」は、牛乳や卵などと並んで満点の100という値を持っています。
- バリン(Valine):筋肉の代謝と成長、組織の修復に重要。
- ロイシン(Leucine):筋肉の合成を促進し、エネルギー源としても機能。
- イソロイシン(Isoleucine):筋肉の修復、ヘモグロビンの合成、血糖値の調節に関与。上記のバリンとロイシンと合わせてBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれて、運動時の筋肉のエネルギー源になり、スポーツサプリ等に含有される。
- リジン(Lysine):体内でタンパク質の合成、カルシウムの吸収、ホルモンや酵素の生成に寄与。
- メチオニン(Methionine):新しい血管の形成、解毒作用、組織の成長と修復に貢献。
- フェニルアラニン(Phenylalanine):神経伝達物質の生成、痛みやうつ状態の管理に役立つ。
- スレオニン(Threonine):タンパク質の合成、脂肪の代謝、免疫システムの強化に関与。
- トリプトファン(Tryptophan):幸せホルモンと呼ばれるセロトニン(幸福感を促進する神経伝達物質)の前駆体。
- ヒスチジン(Histidine):免疫系、消化液の生成、組織の修復に必要。
必須アミノ酸は成長ホルモンの分泌を促進し、細胞の代謝を改善し、脂肪燃焼効果も期待されます。また、シジミに含まれるオルニチンは肝臓で有害な毒素であるアンモニアを無害化する役割を果たし、筋肉の合成や運動による疲労の軽減にも効果的です。貧血予防や睡眠の質の改善にも役立つ栄養素が含まれているため、しじみは健康を支える食品として高く評価されています。
シジミの栄養成分を最大限に活かすには、その調理方法が重要です。特に推奨されるのは、しじみの旨味や栄養成分が溶け出したうまみたっぷりの煮汁を活用する調理法です。味噌汁やしじみのお吸い物、炊き込みご飯などがおすすめで、これらの料理ではしじみの栄養成分と旨味を逃さず十分に吸収できます。
栄養素を損なわない為のしじみの正しい選び方も重要です。新鮮なしじみを選ぶには、殻に光沢があり、閉じているものを選びます。口が少し開いていたり、入水菅・取水管が弱弱しく垂れているのは鮮度が下がっている合図ですので、避けるようにしましょう。
砂抜きはしじみが生息していた汽水域に近い濃度である1%程度の濃度塩水を使って行うのが最適です。真水ですと、しじみから栄養素が水に溶けだしてしまう恐れがあります
保存方法についても、栄養素を保持するためには重要なポイントです。冷蔵保存の場合は、砂抜きをしてから密閉して保存しますが、3日程度しか持たないのと、実はシジミは冷凍保存した方が栄養成分が増えることが知られており、長期間保存と、栄養成分アップの観点から、しじみは冷凍保存が推奨されます。冷凍することでシジミが寒さに対抗する為に、体内のオルニチンの量が増やそうとするので、栄養面での利点もあります。使用する際は、解凍によって栄養成分が溶け出すことを防ぐ為にも、解凍せずにそのまま鍋に入れて調理することがお薦めです。ただし、冷凍する場合の最適な温度はマイナス4度程度です。一般的な家庭用冷凍庫は約マイナス18度ですので、冷やし過ぎない様に、冷凍する際はしじみを入れたフリーザーバックを新聞紙で包んでから、冷凍庫に入れるようにしましょう。
なお、冷凍してからのシジミの砂抜きは出来ませんので、必ず先にしじみの砂抜きを行ってから冷凍するようにしましょう。
シジミの賢い活用法:日常食に取り入れるコツ
シジミを普段の食生活に簡単に取り入れる方法は次の2点になります。
シジミを冷凍して小分け
砂抜きしたシジミを冷凍保存する際に、調理1回分程度に小分けして冷凍すると調理の際に便利です。1人前はレシピによりますが、おおよそシジミ50gを目安にしてください。なお、冷凍保存する場合は大体1か月~3か月程度で消費する様にしましょう。
シジミの佃煮を利用する
シジミを醤油や砂糖、みりん出汁で煮て煮詰めた佃煮は、その栄養素が煮詰められることによって凝縮されています。その為、普段の食卓で気楽にシジミの栄養素を摂取することが可能です。ただし、調理の際に保存の為に、多量の砂糖や醤油などの調味料が使用されていますので、糖分や塩分の過剰摂取の恐れがあるので、しじみの栄養摂取の補助として利用してください。
冷凍シジミ、佃煮シジミの両方を上手に使い分けて、普段の食事にしじみを取り入れていきましょう。
シジミの健康効果まとめ
シジミは、小さい貝ながらも驚くべき栄養価を秘めた食材です。特に、ヘム鉄が豊富で吸収率が高く、貧血予防に非常に効果的。神経系を支えるビタミンB12が睡眠の質を改善し、美肌や疲労回復にも貢献します。肝臓の健康を支えるオルニチンも含まれており、毒素の解毒作用が期待されます。
加えて、シジミには体内で生成できない、すべての必須アミノ酸をバランスよく含み、体の各機能をサポートします。妊娠中の女性にも安全で、適切な調理法と冷凍することにより栄養素を最大限に活かすことができます。シジミは、日常の食事に取り入れることで、健康な体作りを助ける素晴らしい食材、それがシジミです。
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