鰹は古くは縄文時代前期から日本で食べられていた形跡が残っています。カツオが加工されたという最初の文献は古事記(712年)で「堅魚(かたうお)」と呼ばれていて、現在のかつお節の原型と言われています。当時、豊富に捕れるも、カツオはその柔らかい肉質と傷みやすさから、保存食としての方法が求められていました。この為、カツオを硬くなるまで干してから食べる方法が考え出されたと言われています。この製法は、後に煮てから燻製し、最終的に乾燥させるという現代のかつお節製造法へと発展しました。
関連ブログ「カツオを選ぶ時のポイントは?見極める方法と、その健康パワーと薬味の相乗効果」
日本の多くの家庭料理や伝統的な和食では、かつお節は重要な役割を担っています。その豊かなうま味であるイノシン酸は、日本料理の味わい深さを与えてくれていて、日本の食文化を象徴する存在の一つと言えるでしょう。
さらに、11月23日に行われる「新嘗祭」という今年の豊作を感謝して報告する神道の儀式など様々な時に、かつお節が神への供え物として使用されることもあり、これは日本の伝統と文化におけるかつお節との結びつきの強さをを示しています。
たまたまですが、新嘗祭の翌日11月24日は「良い(11)節(24)」という事で「鰹節の日」となっています。奇しくも「良い日本食(1124)」という事で、同日が「和食の日」として2013年にユネスコの無形分化遺産に登録されています。
このように、かつお節は単なる食材ではなく、日本の歴史、文化、宗教においても組み込まれ重要な役割を果たしてきたことがわかります。その独特な製法と伝統、文化的な背景は、かつお節の魅力の一部として、現代においても大切にされています。
かつお節は基本的に本かつおを使用して作られていますが、その他のかつおや魚を使った「節」も存在します。またカツオの部位に寄って呼び方が異なったりします。この章ではその違いについて深堀していきます。
一般的に鰹節に使用するカツオは、一番漁獲高もあり、加工にも適している「本かつお」になります。ただ、そのカツオの部位に寄って、鰹節の名称と味わいに違いがあります。
その他に、普通のかつお節と「血合い抜きかつお節」と呼ばれるかつお節があります。血合いとは、魚の背と腹の間にある赤色線維筋と呼ばれる部分です。魚を三枚におろしたときに身の中央を縦にはしった赤黒い部分が血合いです。この血合いは非常にミネラル豊富な反面、鮮度が落ちると臭みの原因にもなる部位で、この血合いの部分を取り除いたのが「血合い抜きかつお節」です。
血合い抜きのかつお節の場合、その分、臭みが少なくスッキリとした味わいの代わりに、血合いはカツオの身の20%程度を占めている為、それを取り除いた血合い抜きのかつお節は、その取り除かれた分と、その加工の手間の分を合わせて高価格のかつお節となっています。
それぞれ好みによって「雄節」「雌節」「亀節」「血合い抜き」と比べて選んでください。
一般的なかつお節は前述の通り「本かつお」が使われていますが、その他の魚などを使って作れれている節もあります。
この様にかつお節から始まり、様々な魚や肉を使って節が作られています。それぞれ特徴があり、様々な料理に幅広く使われているのは、節にすることによって、うま味が凝縮されることが大きな理由でしょう。
かつお節には実は2種類に分けられます。それは「荒節(あらぶし)」と「枯節(かれぶし)」です。枯節は荒節を更にひと手間加えた品になります。その違いをかつお節の製法を元にご説明します。
かつおなどの原材料を節となるサイズに切り分ける作業です。頭を落とした後に内臓を取り除き、亀節なら三枚おろしにして半身に、雄節・雌節にする場合は、背側と腹側に更に切り分けます。
おろした原材料を専用釜で煮ます。この時に急激な温度変化で身が割れない様に温度を調整して行われます。1~1時間半ほど煮熱して、身の生臭みの素を取り除きます。
煮熱後に身に残っている骨を抜きます。またその際にウロコや臭みの素になる脂肪なども取り除きます。この際に製造過程1の生切りで切り分けた背骨の周りに残っていた肉をすりつぶした「もみ」を骨を抜いた穴を埋めて形を整えます。
骨抜きした身を、コナラやクヌギなどを使用して燻し、その熱によって乾燥させて保存性を高めます。最初の焙乾は「一番火」と呼ばれ、以降は「水抜き焙乾」と呼ばれます。本節だと10~15回ほどこの工程が繰り返し水分を抜いていきます。これにより水分は骨抜き後の1/3以上の20%まで減ります。また水分を抜くだけでなく、燻すことによって酸化を防止する効果と、良い香りとまとわせる意味もあり、より旨味を高めてくれます。また機械化によって効率よく焙乾が行われている場合もあります。
ここまでの過程で出来上がった物を「荒節」もしくは「鬼節」と呼びます。表面はザラザラしているのが、その名前の由来と言われていて、一般的に販売されている「削り節」はこの荒節です。この製造過程1~4まででおよそ1か月程度掛かります。以降の過程を追加すれば枯節になります。
荒節の表面の燻蒸された部分や染み出た油などを削り、この次の過程で行われる「カビ付け」がしやすくします。この削りを行った節を「裸節」やその赤い見た目から「赤剥き」と呼びます。
2~3日天日干しした裸節に、食品に使用しても安全性が確認されているカビを裸節の表面に噴霧して、温度と湿度が管理された室(むろ)で熟成します。カビの力によって裸節の中の水分を抜きつつ発酵を促し、うま味を深めていきます。
カビが十分成長したら節を屋外に出してムシロの上で天日干しします。しっかり天日干ししたら表面のカビをブラシできれいに取り除き、再度カビ付けを行います。
このカビ付けと天日干しを2回以上行った物を「枯節」と呼び製造に3か月ほど掛かります。枯節の表面は薄褐色の粉に覆われた様な見た目をしています。またこのカビ付け天日干しを4回以上行った場合は「本枯節」と呼び半年ほどの期間が掛かります。
一般的に販売されている削り節の表記が「かつおふし」ですと荒節、「(本)かれふし」と書かれている場合は枯節です。また枯節は特別な一品なので、商品名にも大きく書かれていることが多いです。ただし一部使用でも書かれていますので、よくご確認ください。
かつお節の削り節には、その厚みに寄って用途や特徴がそれぞれ異なります。この章ではその厚さごとの特徴をご紹介します。なお厚さによる名称は農林水産省の定める日本農林規格(JAS法)にて統一されています。
削り節の厚みが0.2㎜以下の物を「薄削り」と呼びます。一般的に販売されているかつおの削り節のほとんどが、この薄削りに相当します。かなり薄い為に出汁が短時間で抽出されますが、薄い分、空気に触れる部分が多くなり酸化して風味が落ちやすい側面もあります。
ただ、薄い分、料理に飾ると見た目もふわっと仕上がり、温かい料理ですと、鰹節の薄削りが踊り、目にも楽しい見た目になります。
出汁を取る場合は、短時間で採れるので、風味を損なわずに取ることができます。
薄削りの特徴
削りの厚みが0.2㎜より厚い削り節を「厚削り」と呼びます。その厚みの分、濃厚な出汁を引き出すことができる削りになります。ただ、その厚みの分、すぐに出汁が出る薄削りと異なり、圧削りは出汁を出すのに15~20分ほど時間が掛かります。抽出時間が長い分、熱でかつおの香り成分が飛んでしまうので、出汁の抽出の最後にかつお節を追加で入れて香りを足す「追い鰹」という料理のテクニックを加えることで解決します。
厚保削りの特徴
かつお節を糸状に削った物。主に日本料理の彩りとして使われるもので、おひたしや和え物、酢の物、煮物などを飾る様とで使われる。
薄削りを細かく砕いた物、細かくすることに寄って小分けのパックに小分け保存が可能になり、必要に応じて参加していないかつお節を料理に使用することが可能になりました。
破砕したかつお節を更に粉状に細かくしたもの、料理のトッピングとして香りやうま味の付加に使われる。
それぞれの厚みや形状により、使われる料理や使い方が異なります。料理に合わせて様々な鰹節を利用して、その奥深いうま味とコクを楽しみながらお試しください。
美味しいかつお節出汁、せっかくならより美味しい出汁が取れるコツをご紹介します。
薄削りは一般的な和食やみそ汁の出汁に、厚削りはそばや和風ラーメンの出汁に向いています。
かつお節のうま味成分であるイノシン酸は、昆布のうま味成分であるグルタミン酸と合わせると、相乗効果でうま味がアップします。ただ昆布とかつお節では出汁の取り方が異なりますので、注意が必要です。
合せ出汁にすることにより、料理が一味上になり、旨さの奥深さが上がります。
かつお節を長期保存するのに、冷凍保存も有効です。この場合、パック内の空気を抜いて酸化が進まない様にしてから冷凍し半年を目安に使い切るようにしましょう。
縄文時代から日本人に親しまれてきた鰹。そのカツオの加工品であるかつお節は「堅魚(かたうお)」の名前で日本最古の文献である「古事記」にも書かれている程、日本人には馴染みの深い保存食でした。そしてかつお節は最初の干して保存性を高めた堅魚から燻蒸した荒節、有用なカビを付けて水分を減らしつつも発酵熟成させて旨味を凝縮された枯節(本枯れ節)へと進化を進め、カツオに限らず様々な魚や肉を節へとする技術革新が進んでいっています。
古き良きかつお節を大切にしつつ、様々な「節」の可能性を楽しみながら未来へと旨味で繋がっていきましょう。
This website uses cookies.