水菜の豊富な栄養と健康効果:免疫力向上、疾病予防にどう寄与する?その秘密を徹底解剖
はじめに:水菜の栄養に注目する理由
水菜、日本の伝統野菜として知られるこの緑黄色野菜は、その栄養価の高さで注目を集めています。京都で平安時代から栽培され、”京菜(きょうな)”とも呼ばれるこの野菜は、壬生寺周辺で栽培されていた壬生菜の近縁種です。
水菜の名前の由来は、その栽培方法にあります。特別な肥料を必要とせず、清らかな流水のみで育つという、自然との調和を重んじた栽培が特徴的です。この単純だが豊かな栽培法は、水菜が持つ驚くべき生命力の象徴です。本稿では、水菜がどのようにしてその生命力を維持し、その栄養が我々の健康にどう貢献するのか、その内なるパワーに焦点を当てて解説します。
水菜の栄養成分の紹介
水菜は、栄養価が高く、多くの健康メリットを提供してくれる野菜です。この章では水菜の栄養素についてご紹介します。水菜はビタミン、ミネラル、食物繊維がバランスよく含まれている緑黄色野菜です。
特にβーカロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄分、食物繊維が豊富な他に、モリブデン、ビタミンK、葉酸、カリウムも含まれています。
βカロテン
βカロテンは体内に入るとビタミンAに変換されます。変換されたビタミンAは、暗所での視野の確保や、目や皮膚などの粘膜を健全にしてくれ、免疫向上にも効果があり、細胞の増殖にも必要な栄養素です。またβカロテン自体も抗酸化効果が期待できます。水菜にはそんなβカロテンが100gあたり1300μg含まれています。
ビタミンC
ビタミンCは強力な抗酸化効果がある栄養素です。抗酸化の他に、鉄分を吸収するのを助けたり、コラーゲン生成を助けて皮膚代謝を活発にしてくれます。またビタミンCは免疫機能を司る白血球を活性化させる効果も期待されます。
カルシウム
水菜に含まれるカルシウムは、骨や歯の健康を支える重要な役割を果たします。カルシウムは骨密度の維持に必要で、骨粗しょう症のリスクを減少させるのに役立ちます。また、筋肉の機能や神経伝達にも関与しているため、全体的な身体機能の維持に寄与します。
鉄分
水菜にも含まれる鉄分は、血液内で酸素を運ぶ赤血球の成分の一つです。鉄分が体内に十分にあることによって、全身の細胞に酸素を供給することが可能になります。
食物繊維
水菜に含まれる不溶性食物繊維は、胃や腸で水分を吸収し膨らみ、便の量を増やして腸の蠕動運動を活発化させて便秘の解消し、胃に長く留まることで満腹感を与え食べ過ぎの防止してくれます。これによって水菜の食物繊維は消化器系の健康に寄与します。
モリブデン
モリブデンは、体内の酵素反応を助ける微量元素で補酵素として働き、水菜にも含まれています。この栄養素は貧血の予防、疲労回復、さらに体内の有害物質を排出するデトックス作用を促進することで、健康維持に重要な役割を果たします。
ビタミンK
水菜にも含まれている脂溶性のビタミンKは、骨を丈夫にし、出血した血を固める効果があることから、健康的な骨格の維持などの健康効果に寄与します。またビタミンKは、食べ物に含まれるカルシウムを骨に取り込んで強化する役割を担います。水菜1束で男女ともに一日の必要ビタミンK量の約40%を摂取できます。
葉酸
水菜には100g当たり140μg含まれる葉酸は、赤血球の生成を助ける水溶性ビタミンで、貧血予防に重要な栄養素です。また葉酸は、細胞の分裂やその成熟に関与するため、特に妊娠中の女性にとって重要で、積極的な摂取が望ましい栄養素です。
カリウム
水菜には100g当たり480mgのカリウムが含まれています。これはおよそブロッコリーと同等の含有量になります。水菜に含まれているカリウムは体内の過剰なナトリウムを排出するのを助けてくれて、高血圧の改善、むくみの解消に効果が期待できます。
水菜は、視力保護、皮膚と免疫系の健康維持、骨強化、貧血予防、消化器系の健康促進など、多様な健康効果を持つ栄養豊富な緑黄色野菜です。次章「水菜の健康効果」では、これらの栄養素が日常の健康にどのように貢献するかを詳しく解説します。
水分 | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維総量 | 炭水化物 |
91.4g | 2.2g | 0.1g | 3g | 4.8g |
カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 鉄 |
480mg | 210mg | 31mg | 64mg | 2.1mg |
銅 | マンガン | ヨウ素 | セレン | クロム |
0.07mg | 0.41mg | 7μg | 2μg | 3μg |
モリブデン | β−カロテン | ビタミンK | ビタミンB1 | ビタミンB2 |
20μg | 1300μg | 120μg | 0.08mg | 0.15mg |
ナイアシン | ビタミンB6 | 葉酸 | ビオチン | ビタミンC |
0.7mg | 0.18mg | 140μg | 3.1μg | 55mg |
みずな(生)栄養成分100g当たり【出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年】より
水菜の健康効果
この章では水菜に含まれる栄養素によって、どの様な健康効果が期待できるか詳しく紹介致します。
丈夫な骨の形成
水菜に含まれるカルシウムは100g当たり210mgと牛乳の110mgのおよそ2倍ものカルシウムが含まれています。カルシウムは健康な骨の維持に欠かせないミネラルで、骨や歯の主成分です。人体に最も多く含まれるミネラルの一つであり、筋肉の収縮や神経の安定化にも役立つため、大人だけでなく成長期の子どもにも積極的に摂取したい栄養素です。
更に、水菜にはビタミンKが100g当たり120㎍も含まれています。ビタミンKには骨を丈夫にする効果があり、水菜1束で1日の必要量の約40%を摂取できます。
このように豊富なカルシウムとビタミンKを含む水菜は、健康な骨を維持するのに有用な野菜です。
貧血の予防
水菜には赤血球の原材料である鉄分と、その赤血球を作るのを助ける葉酸が豊富に含まれています。また鉄分を身体に吸収しやすくするビタミンCも含まれている水菜は、貧血予防に効果的な野菜と言えます。
また微量ですが、水菜に含まれているモリブデンは血液を作るために必要な鉄が体内で不足すると、肝臓に蓄えられている鉄の運搬を助けて赤血球の生成を助けます。また、また余分な銅の排泄や鉄の代謝にも関わっている成分です。
水菜に含まれる鉄分、葉酸、モリブデンは貧血予防に効果的です。貧血予防に積極的に摂りたい野菜です。
腸内環境の改善
水菜に豊富に含まれる不溶性食物繊維は水分を吸収することによって便の量を増やし、それによって腸の蠕動運動を活発化させます。また水菜に含まれるマグネシウムは体内で吸収されにくく、水を集めやすい酸化マグネシウムに変化し、水分を集めて便を柔らかくします。これら食物繊維とマグネシウムの相乗効果で、腸内環境を整え、便秘解消効果が期待できます。
免疫力の向上
水菜に含まれるβカロテンとビタミンCは免疫力向上に効果的な栄養素として知られています。
βカロテンは体内で吸収されるとビタミンAに変換され、ビタミンAには抗酸化作用があり、活性酸素を抑えることで、免疫力向上や風邪予防に役立ちます。
またビタミンCも免疫力を強化するのに重要な役割を果たします。ビタミンCは免疫細胞である白血球の能力を高め、体内に侵入した病原体を死滅させやすくする効果があります。ビタミンCは抗酸化作用と酵素を助ける作用を持ち、白血球の機能をサポートすることで免疫システムを強化します。成人の場合、1日に必要なビタミンCの量は女性で75mg、男性で90mgとされています。
これらの栄養素は身体の健康をサポートし、特に免疫細胞の機能を維持し、活性酸素による細胞の傷害を防ぐことで、全体的な免疫力の向上に寄与します。
また間接的ですが、免疫細胞の70%は腸内にいて、食料と一緒に入ってくる病原菌やウィルスと戦っています。つまり水菜などに含まれる食物繊維で腸内環境を良好にすることによって、免疫力の向上が期待できます。
健康的な肌
水菜のビタミンA(βカロテン由来)とビタミンCは健康的な肌を維持するのに必須の栄養素です。ビタミンAは、肌の粘膜を保護し肌代謝を高め、シミ・しわを予防します。またビタミンCと鉄分はコラーゲン生成を促し肌のハリを出してたるみを予防し、シミやくすみの原因になるメラニンの生成を予防します。また両ビタミンとも非常に強力な抗酸化作用がある為、肌を酸化ストレスから守り若々しく健康的な肌を守ってくれます。
ただし、ビタミンAが不足している状態で、急にビタミンAを大量に補給すると「レチノイド反応」(通称「A反応」)が起こることがあります。これは、ビタミンAが補給されることによって、肌の新陳代謝が一時的に活発になって、乾燥感や皮剥け、赤み、かゆみなどが生じる反応です。
レチノイド反応を予防する為にも、普段からビタミンA(βカロテン)を含む水菜などの野菜を積極的に摂ることが重要です。
水菜を食生活に取り入れる方法
せっかくの豊富な水菜の栄養素、より良い物を摂取する為には、より良い水菜の選び方とその保存方法、栄養素を逃さない調理のポイントがとても重要になります。この章ではそれぞれの注意すべき点をご紹介します。
水菜の選び方
水菜はその90%が水分で出来ています。つまり鮮度が良いほど、水分が多いので、根元から葉先までピンとまっすぐに伸び、みずみずしい水菜が鮮度の良いものです。また、見た目からの判別方法は、緑色の葉と白い茎の境目がはっきりしていること、葉が鮮やかな緑で大き過ぎず、葉に浮かんでいる葉脈がくっくきりと出ている物が理想的です。
水菜の保存方法
水菜を美味しく栄養素を逃さない保存方法をご紹介します。
水菜:冷蔵保存
水菜を冷蔵保存する場合は2~3日程度で使い切るのが良いでしょう。その際に水菜を新聞紙やペーパータオルで包みポリ袋に入れるなどして、乾燥しない様にすると鮮度が長持ちします。また根本付近を湿らせるのも効果的ですが、葉に水が付くと傷む原因になるので、気を付けて行いましょう。
使いやすいようにカットして保存する場合は、切り口から傷みやすいので、1~2日で使い切るようにしてください。また切り口から水溶性の栄養素が溶け出してしまうので、水洗い後によく水気を取ってからカットして保存する様にしてください。
- 乾燥予防に新聞紙、ペーパータオルで包む。
- 葉は濡らさず、根元だけ湿らせる。
- ポリ袋等に入れて冷蔵保存。
- 株のままだと2~3日、カットした場合は1~2日で使い切る。
水菜:冷凍保存
水菜をすぐに使用しない場合は、水洗いしてからよく水気を切って、使用するサイズにカットしてジップロックに入れて冷凍保存すれば、1か月くらいは保存が可能です。ただし、冷凍によって細胞壁が壊れるので、水菜のシャキシャキ感は失われるので生食には向いてません。また解凍してしまうと、水分と一緒にビタミンCなどの栄養素も抜け出してしまうので、解凍せずにそのまま調理に使った方が、せっかくの水菜の栄養素を逃さずに摂取することが出来ます。
- 洗った後に水気を切って使うサイズにカットしてジップロックへ入れて冷凍。
- 冷凍すると食感が失われるから生食には不向き。
- 解凍すると栄養素が流れ出るので、解凍せずに調理。
栄養を損なわない調理のコツ
水菜には水溶性、脂溶性の両方の栄養素が含まれています。その為、調理の際に少しのコツを使えば、より多くの栄養素を水菜から引き出すことが出来ます。この章ではそのコツをご紹介します。
- サラダ:生食する場合、水溶性の栄養素であるビタミンCや葉酸は気にしなくても良いですが、脂溶性のβカロテンやビタミンKは吸収し難いです。吸収効率を上げる為に、食べる時にオリーブオイルなどの良質な油を一緒に摂ることで、栄養を効率的に摂ることが期待できます。
- 鍋物・汁物:水菜を煮炊きする場合は、せっかくの水溶性栄養素が抜けださない様に、下茹でせずにそのまま使うことを推奨します。そうすればスープ内に栄養素が溶け出し、逃すことなく摂取することが出来ます。またその時に油揚げや肉類を一緒に煮ると脂溶性の栄養素もスープに溶けだして効率的に栄養を取ることが可能です。
水溶性の栄養素は流れ出してしまわない様に、脂溶性の栄養素は肉や魚の脂や良質な油脂を一緒に摂ることを意識することによって、くまなく栄養を摂取することが可能です。
まとめ:水菜の栄養を日々の健康に活かそう
水菜は、健康に非常に有益な緑黄色野菜です。βカロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄分、食物繊維などの栄養素が豊富で、さまざまな健康効果を提供します。
水菜を日々の食生活に取り入れることで、視力保護、皮膚と免疫系の健康維持、骨強化、貧血予防、消化器系の健康促進などの多様な健康効果が期待できます。生食や調理法によって栄養素の吸収率が変わるため、調理時には栄養損失を最小限に抑える方法を選ぶことが大切です。このように多面的な栄養価を持つ水菜は、健康を維持し向上させるために積極的に取り入れたい野菜です。
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