羊羹(ようかん)の不思議な歴史:中国起源の羊肉スープから日本の甘いお菓子への進化?
よく考えたら不思議な名前の「羊羹(ようかん)」
お茶菓子にも、ちょっとした手土産にも重宝する「羊羹(ようかん)」。よく見てみると「羊(ひつじ)」の一字があります。どう考えても羊と和菓子のようかんに似ているところはありません。また羊の後ろの一字も「羹(あつもの)」という字が当てられています。この羹(あつもの)日本のことわざに「羹に懲りて膾吹く(「熱いスープを飲んで火傷したから冷たいなますにも息を吹きかける」失敗に懲りて、必要以上に用心深くなり無意味な心配をすることの例え)」にある様に、羹(あつもの)は元来は肉類や魚介類で作ったトロミのあるスープのことでした。
このままですと羊羹は「羊肉の熱いスープ」という意味になってしまいます。今回はなぜ羊羹に「羊(ひつじ)」と「羹(あつもの)」の漢字が使われているのか?、その由来を解き明かしていきます。
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発祥は中国
日本の文献で最初に「羊羹」を紹介されたのは鎌倉後期・南北朝時代の禅僧 玄恵(ゲンエ)(生年不詳~1350年)が書いた「庭訓往来(往復した手紙のやり取りを編纂された書物)」と言われています。「庭訓往来」によると、当時、中国(宋)に留学していた僧侶が点心料理として出された「羊肉をスープにして作った煮凝り」だったと言われます。
精進料理から
羊羹が日本で羊肉の汁物ではなく小豆を使用したお菓子になった理由は、当時の仏教において僧侶は「肉食」は禁じられていたのと、当時僧侶以外の普通の人々も仏教の教えに従ってほとんど肉食しておらず、ましてや日本では羊の肉は食べられていませんでした。そこで羊羹を再現するのに羊肉の色を小豆に見立て、小麦粉や葛粉などを使って作られたと言われています。
ただし、昔は砂糖は超貴重品だった為、小豆のみのうっすらした甘さの羊羹がほとんどで、砂糖を使われた羊羹は「砂糖羊羹」と呼ばれ特別なお菓子でした。その貴重さは室町時代の第8代将軍 足利義政が砂糖羊羹を振舞ったとわざわざ記述が残ってくらいです。その後江戸時代中期までただ単に「羊羹」と言えば甘葛(あまかずら)というつる性の植物から摂った液を煮詰めたシロップで甘味を付けた物だったそうです。
当初は煮た小豆を葛粉で固めた物だった羊羹ですが、時代が進みにつれて製法も研究され蒸して固める「蒸し羊羹」が出てきました。この蒸し羊羹が現代も残る「ういろう」などの原型にもなります。
江戸後期(1800年代)になると、それまで希少品だった砂糖が大量に琉球王国から入ってくることによって一般的になり、砂糖で味付けした餡と寒天を練り合わせて作る「練り羊羹」が出てくるようになりました。また同時期に寒天の量を減らして羊羹の中の水分を多くした「水羊羹」も出てきました。
元々は冬の食べ物「水羊羹」
現代においては食材は「冷蔵庫」で保存することも、缶や袋に真空密閉して長期保存することも出来ますが、江戸時代においては全ての食物は常温で置かれるので、水分量の多い水羊羹はすぐに痛んでしまいます。その為、水羊羹は冬場に作って販売されていました。その珍しさもあって、当時は水羊羹を「おせち」として食べられていたそうです。その後冷蔵技術が発達するに連れて、涼しげな水羊羹は夏の食べ物に変わっていきましたが、現代も一部では「水羊羹」をおせちとして召し上がる地域もあるそうですし、練り羊羹もおせちとして飾り付けされた「正月羊羹」も少ないですがあります。おそらく江戸時代に「水羊羹」をおせちとして食べていた名残なのでしょう。
まとめ
羊羹は元々は中国で出された羊肉のスープでした、ただ、その製法を日本に伝えたのが肉食を禁止していた禅宗の僧侶だったために、伝来直後から羊肉の色に似た小豆で再現したのが日本の羊羹の始まりです。現代中国でも羊羹の原型になった元々の羊肉を使用して煮込みその後煮凝りの様に固まった「ヤンロン・パオモー」という名前の料理が残っています。
羊羹は日本に伝来し日本独自の和菓子として進化してきました。甘く濃厚な羊羹の甘みを楽しみつつ、そんな羊羹の歴史もお楽しみください。
伝統と革新が紡ぐ、秋の味覚の極みギフトにも – 若山商店「栗大納言ようかん」
商品紹介
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