日本で白身魚の高級魚といえばみんなが知っている「タイ」ですが、実はかつては、夏になると産卵を終えて痩せてしまったタイよりも「スズキ」の方が人気でした。その昔、冷蔵施設の無かった時代でも、東京湾の比較的沿岸部の内湾で取れるスズキは鮮度も良く江戸っ子に人気の高い食材でした。
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また成長に応じて「セイゴ(1歳頃)」「フッコ(2~3歳)スズキ(4歳以上)と名前が変わることと、かの平清盛が熊野詣に船で行った際にスズキが跳ねて船内に入って来たそうです。その後、平清盛は太政大臣まで上り詰めたので、スズキは出世魚としてお祝い事に欠かせないおめでたい魚として珍重されていました。
古代から日本人には好まれていたみたいで、貝塚からスズキの骨が出土されていますし、文献では「古事記」に、出雲のオオクニヌシノミコトが国譲りの際に供した宴でスズキが料理され振舞われたというのが最古の記述です。
当然ながら人名の「鈴木」さんとは無関係です。名前の由来は所説ありますが、順番にご紹介します。
どれが正解というのは無いのですが、魚のスズキを漢字で書くと「鱸」となり、魚偏に「盧」となります。この「盧」は音読みでは「ロ」訓読みでは「くろ」もしくは「めしびつ」となります。この事から、もしかしたらスズキはその見た目の煤けた黒さから名付けられたのかもしれません。
余談ですが、火偏に「盧」で爐(炉)と書いてイロリ(囲炉裏)やヒバチ(火鉢)と読むそうです。こちらも煤けた感じなのは一緒ですね。
スズキは高たんぱくなのに低脂質な上に様々な栄養素も豊富に含んでいます。
美味しいだけでなく、非常に栄養豊富な魚、それが「スズキ(鱸)」なのです。
エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維 | 炭水化物 |
113kcal | 19.8g | 4.2g | 0g | Trg |
ナトリウム | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン |
81mg | 370mg | 12mg | 29mg | 210mg |
鉄 | 亜鉛 | 銅 | マンガン | ビタミンD |
02mg | 0.5mg | 0.02mg | 0.01mg | 10㎍ |
ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | ビタミンB12 |
0.02mg | 0.2mg | 3.9mg | 0.27mg | 2㎍ |
すずき(生)栄養成分100g当たり【出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年】より
かつては夏の白身の代表格として「焼いて良し」「刺身で良し」と大人気でしたが。高度経済成長で海洋汚染が広まると、「油臭い」などと言われ需要が減っていた時代もありました。ただ近年は海洋の水質も改善され、また徐々に人気が高まってきています。
また、食ではないですが釣り人もスズキは魅了しています。日本では「スズキ」ですが、英語で「Sea bass シーバス(海のブラックバス)」と呼ばれるほど、食いつきと勢いが良くエキサイティングな釣りができると人気を博しています。
秋の産卵の時期は、栄養が卵に移って味が落ちてしまいますが、4月~8月に掛けてが旬のスズキは春先から徐々に美味しくなっていきます。特に夏になるとしっかり太り脂が乗って非常に美味しくなり、かつては夏の高級魚として名を馳せていました。実は秋に落ちると言われるスズキですが、産卵期が終わり冬越しに向けてまた脂を貯え出します。つまり冬場のスズキは人気が低くなっているから値段もリーズナブル、そしてそこそこ美味しいと狙い目の魚です。
高度経済成長の時に海の汚れとともに一時は不人気になってしったスズキ。ただ昨今の海洋環境の改善の努力とと釣り人からの人気と共に、スズキは「再び美味しくなる魚」と期待を集めています。
これを機に、スズキのお刺身を氷水で締めた「洗い」や洋風に「カルパッチョ」定番の「塩焼き」「フライ」など色々なレシピを試して、かつての高級魚を賞味しつつ、その豊かな栄養をたっぷり取り入れて健康になりましょう。
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