初夏の食卓を彩るバラ科の果物の枇杷。その原産地は中国の長江(揚子江)上流と言われいます。栽培を始めて行ったのも中国と言われ、現在の日本で栽培されている枇杷は江戸時代末期ごろに中国から伝来し「茂木(もぎ)」と「田中」という品種になったと言われ、現在の栽培種の多くをこの2品種が占めているが、最近は様々な品種が増えてきています。
ただ、日本で最初に枇杷について書かれていた文献は762年の正倉院の記述であるのと、2022年の佐賀大学の研究により、日本で自生していた枇杷の遺伝子のゲノム配列が中国からもたらされた栽培種と違いました。
その為、日本で自生していた枇杷は、元々日本で自生していた可能性と、江戸時代よりだいぶ昔に中国で栽培されてこなかった枇杷がもたらされた可能性が示唆されました。
また、弥生時代の遺跡から山枇杷の痕跡が発見されていたので、古くから日本で自生していた模様です。ただし長らく栽培には至らず、上記の江戸末期の「茂木」「田中」の栽培から日本での枇杷栽培が本格的に始まったと言われています。
枇杷(ビワ)の名前は、楽器の「琵琶(ビワ)」に由来します。琵琶は元々、ペルシャ(現在のイラン)の「バルバット」という楽器がシルクロードを経て琵琶(中国語音:Pípá)になりました。これは演奏する時に弾く音が「ピィン」「パァン」と聞こえる事が理由で、日本にはそのまま「琵琶(びわ)」として奈良時代に渡来し正倉院に納められました。
その楽器の琵琶の形状と果物の枇杷の形状が似ていた為、「びわ」と呼ばれました。その後、楽器の方は琴の一種として琴と同じ王偏の「琵琶」になり、果物の方は木偏の「枇杷」になりました。
ちなみに滋賀県の琵琶湖も楽器の琵琶に由来し、14世紀の渓嵐拾葉集(けいらんしゅうようしゅう)に「琵琶の形に似ている」という記述があり、それまで固有の名称はなかった同湖が17世紀後半から「琵琶湖」と呼ばれるようになったそうです。
枇杷の主要な産地は1位は初期に枇杷栽培が始まった長崎県で、次いで2位は千葉県、3位香川県、以下鹿児島県、愛媛県と続いています(2021年時点)
枇杷は氷点下3℃以下になると生育できないので、関東から西にでのみ栽培されています。
この限られた場所で栽培されている枇杷には健康に良い素晴らしい栄養成分が含まれています。今回の記事では、そんな枇杷の健康に良い魅力についてご紹介致します。
初夏の果物である枇杷にはこれから暑い夏を乗り越える為に必要な様々な栄養素を多く含んでいます。
正常の肌代謝や粘膜の保護、暗所での視野の確保に必要な栄養素な上に、免疫力を高める効果もあります。
ビタミンB群は、糖質や脂質をエネルギーに変換するのを助けてくれる効果があります。ビタミンB群が不足すると、身体はエネルギーを作りだしにくくなり、疲れやすくなってしまいます。活動的に行動するのに必須の栄養素です。
免疫を助ける効果があるので、風邪予防でよく補給を進められる栄養素です。それだけではなく鉄分の補給を助けたり、コラーゲンを生成したり皮脂の分泌を抑制したり美しい肌を維持するのに必須のビタミンです。
また、紫外線などによって細胞を老化させる活性酸素を中和する抗酸化ビタミンとしても知られています。ビタミンCによって若々しく健康的な体を維持することが出来ます。
体は体内の濃度を一定に保つ性質があります、その為、食事などで塩分を摂ると体内のナトリウム濃度を一定にする為に血管や体内に水分を多く取り込んで濃度を保ちます。これによって血管内の圧力が高まって高血圧になり、体内に多くの水分が溜まってむくみの原因になります。
カリウムはこの過剰なナトリウムを体外に排出してくれるのを助け、結果として濃度が薄まるので、先ほどと逆に体内から水分を排出して高血圧やむくみを改善してくれます。
びわには食物繊維が1.6g(100g当たり)含まれております。その内1.2gが不溶性食物繊維、残り0.4gが水溶性食物繊維です。
昨今の研究によって、腸内環境を改善すると、免疫力が向上し、また腸から幸せホルモンであるセロトニンを作るのに必要なトリプトファンが作られています。腸を改善することは脳を改善することに繋がることから、この関係のことを「腸脳相関」と言われています。
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維 | 炭水化物 |
41kcal | 88.6g | 0.3g | 0.1g | 1.6g | 10.6g |
ナトリウム | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 鉄 |
1mg | 160mg | 13mg | 14mg | 9mg | 0.1mg |
亜鉛 | 銅 | マンガン | ヨウ素 | セレン | クロム |
02mg | 0.04mg | 0.27mg | 0㎍ | 0㎍ | 0㎍ |
モリブデン | βーカロテン | β−クリプトキサンチン | ビタミンD | ビタミンE | ビタミンK |
0㎍ | 510㎍ | 600㎍ | 0㎍ | 0.1mg | ー㎍ |
ビタミンB1 | ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | ビタミンB12 | 葉酸 |
0.02mg | 0.03mg | 0.2mg | 0.06mg | 0㎍ | 9㎍ |
パンテトン酸 | ビオチン | ビタミンC | 食塩相当量 | ||
0.22mg | 0.1㎍ | 5mg | 0g |
枇杷 栄養成分100g当たり【出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年】より
びわに含まれるβカロテンは体内でビタミンAに変換され、肌の代謝を助ける効果があります。また同じく含まれているビタミンCはコラーゲンを生成するのを助けてくれます。この二つの効果により肌代謝が促進し美しい肌を維持することができます。
またこの二つのビタミンは非常に強力な抗酸化効果をもっており、夏の強い紫外線などによる肌のダメージを回復するのに必須の栄養素です。
ビワに含まれるビタミンB群とクエン酸は、それぞれ別のアプローチで疲労の回復を進めてくれます。
このように、びわのビタミンB群によって効率の良いエネルギー生産を、クエン酸によって疲労物質の解消が進んで、夏の暑さによるつらい疲労から回復するのを助けてくれます。
ビワに含まれるβカロテンとビタミンC、そして食物繊維が協力して免疫力を上げるのを助けてくれます。
これらの健康効果はビワだけで達成できる訳ではなく、日々のバランスよい食生活に枇杷をプラスすることによって実現されます。
美味しいびわのポイントは何といっても鮮度が重要になります。その為以下のつのポイントに注目してビワを選んであげましょう。
とくに表面の産毛やブルームは鮮度が落ちると無くなっていってしまうので、分かりやすい目安と言えます。同じように表面のブルームによって鮮度が分かる野菜として「キュウリ」が挙げられます。
ビワはバナナや桃みたいに追熟して甘くなることが無い果物です。その為、鮮度が命なので購入後は早めに召し上がる事をお奨めします。
古くから枇杷の葉にも健康に良いと言われ、ビワの葉を炙ったり、ビワの葉の上から温灸をしたりする枇杷の葉療法が中国に留学していたお坊さん(僧医)によって日本に広まったと言われます。
その為か、日本のお寺に枇杷が植えられている場合が多々見受けられます。
様々な健康効果のある枇杷、古くは寺院で治療に使われていたりもしています。ただそれだけ薬効成分があるということは、取り過ぎによる副作用が出てしまう場合もあります。
また枇杷自体が、バラ科の植物ですので、バラ科のアレルギーがある場合は、食べる際に少しずつ食べて、身体に異変がないか確認しましょう。
どんな健康に良い食べ物においても、最も大切なことは「適量」食べることです。
初夏を彩る果物「枇杷」。現在、一般的になっている枇杷は江戸末期から明治にかけて中国から伝来した品種ですが、古来より日本で愛されてきた果物でもあります。
それは甘味として利用もあるでしょうが、その栄養素による健康効果と、その葉を利用した枇杷の葉療法のその両方の効果が日本において長く愛されてきた理由です。
鮮やかな橙色の枇杷を日々のバランスの取れた食事に加えて、より健康的に暑い夏を乗り越えていきましょう。
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