身近な野菜の筆頭と言っても過言のない野菜である「にんじん」。そんなにんじんですが、実は含まれるβカロテンや「アンチエイジング」「腸内環境改善」「がん予防」と健康に良い効果がたくさんある野菜だったりします。
今回の記事では、そんな身近なスーパー野菜であるにんじんの歴史と奥深い健康効果を深堀りしたいと思います。
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にんじんの野生種はロシアを除くヨーロッパ全土と北アフリカ、中央アジアに分布しているせり科の植物です。
にんじんは中央アジアのアフガニスタンからインドなどを経由して10世紀頃に中国へと伝わって東洋にんじんとなりました。その後、16世紀頃に日本にも伝来しています。当初、人参といえば薬用効果のあるウコギ科の「朝鮮人参や田七人参」などを指す言葉で、東洋にんじんは「胡蘿蔔(こらふ)」と呼ばれていました。ただ形状が似ていたことと、せり科のにんじんは「芹人参」と呼ばれ、また薬用ではなく食用のため、広く一般に広がって食用のにんじんが一般的になっていきました。
また同じようにヨーロッパにも普及していきました。当時のにんじんは現在のオレンジ色の見た目だけではなく、アントシアニンやリコピンなどの色素を含み紫色などの色をしている物が多かったそうです。ただ、調理する際に、その色素が料理に溶けだし味は美味しいが見た目が悪くなるという問題がありました。
その後、その紫色種の中で突然変異でアントシアニン色素を含まない現在の西洋にんじんの原型になったにんじんが出来、それをオランダ人によって品種改良されて今の西洋にんじんとなりました。
日本では、東洋にんじんが先に入ってきましたが、長崎やアメリカ経由で西洋にんじんが江戸後期には日本に入ってきました。当初はそれまで日本に馴染んでいて身が硬く保存に優れていた東洋にんじんが一般的でしたが、細く長く掘り返すのが困難だった為、掘り返すのが楽な短根種である西洋にんじんに徐々に移り変わっていきました。
当初のにんじんは、臭いが強く、子供に嫌われる野菜の1つでしたが、品種改良のお陰で、今は臭いが少なく甘い品種が一般的になっています。
人参の英語名は、英語やフランス語、インドのサンスクリット語など様々な言語の元になったと言われているインド・ヨーロッパ祖語において角を意味する「ker」がルーツと言われています。
それが次にギリシャ語で「 karoton(野菜の角)」となり、ラテン語で「carota 」に変化しました。ついで中期のフランスで「carrote」になり、英語で「carrot」という記述は1530年頃に記録が残っています。
にんじん(carrot)という英語のの始まりが「角」であったという、ちょっと興味深い由来でした。
薬用の朝鮮人参などから現在のにんじんが一般的になったのは、食用だっただけではなく、バランスよく様々な栄養素が含み、結果健康を維持するのに効果的だったのも大きいです。この章ではこのニンジンに含まれるβカロテンやビタミンC、食物繊維など健康に与える効果を深堀していきます。
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 食物繊維 | 炭水化物 |
35kcal | 89.1g | 0.7g | 0.2g | 2.8g | 9.3g |
ナトリウム | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 鉄 |
28mg | 300mg | 28mg | 10mg | 26mg | 0.2mg |
亜鉛 | 銅 | マンガン | ヨウ素 | セレン | クロム |
02mg | 0.05mg | 0.12mg | ー㎍ | ー㎍ | ー㎍ |
モリブデン | βカロテン | ビタミンD | ビタミンE | ビタミンK | ビタミンB1 |
ー㎍ | 6900㎍ | 0㎍ | 0.4mg | 17㎍ | 0.07mg |
ビタミンB2 | ナイアシン | ビタミンB6 | ビタミンB12 | 葉酸 | パンテトン酸 |
0.06mg | 0.8mg | 0.1mg | 0㎍ | 21㎍ | 0.37mg |
ビオチン | ビタミンC | 食塩相当量 | |||
ー㎍ | 6mg | 0g |
にんじん 栄養成分100g当たり【出典:文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年】より
にんじんの代名詞と言っても良い栄養成分としてβカロテンが挙げられる。このカロテンはにんじんのラテン語:carota もしくは英語:carrotが語源となっています。
このβカロテンは、にんじんを含む様々な果物や緑黄色野菜に含まれる黄色もしくはオレンジ色の色素で、食べて体内に取り込むことによってビタミンAに変化します。
にんじんに含まれるビタミンAとビタミンCはそれぞれ強力な抗酸化作用を含み、細胞を劣化させ老化などの原因になる活性酸素に対抗する大切な栄養素です。
またビタミンAは肌や粘膜の代謝や暗所での視力維持に重要な栄養素で、ビタミンCは肌のコラーゲン生成を助けるだけでなく、食物中の鉄分を吸収するのを助ける効果もあります。
この為、にんじんに含まれるビタミンAとビタミンCの抗酸化効果によって活性酸素や紫外線による肌の劣化を抑え、またコラーゲンなどの代謝により若々しい肌を維持することに効果的な栄養素になります。
実はにんじんはダイエットに効果的な野菜です。なぜなら100g当たり35kcalと非常に低カロリーな上に、満腹感を高め腸内を整えてくれる食物繊維が豊富に含まれています。
最近の研究で、腸内環境を良くすると脂肪代謝を高める効果が期待できるという研究も進んでいます。また前述の活性酸素も脂肪を分解するのを阻害すると言われていて、にんじんに含まれるビタミンA(βカロテン)やビタミンCなどの抗酸化栄養素を摂ることによって、効率的に脂肪代謝を進めることが期待されます。
にんじん100gには水に溶ける水溶性食物繊維が約0.5g、水に溶けない不溶性食物繊維が約2.3g含まれています(総量2.8gの食物繊維)。
にんじんにも含まれるこれらの食物繊維は、腸内を健康に保ってくれます。最近の研究では腸内を健康にすることによって免疫機能が向上するだけでなく、脳にも良い影響があるという脳腸相関の研究も進んできています。
一般的なにんじんは、およそ120日間で生育収穫されて私たちの食卓へと届けられています。その際、出荷される際には硬くなってしまった葉は切り落とされて出荷されています。(葉から水分が抜けて劣化を進めてしまうなどの理由もあります)
ただ、春から初夏にかけて間引きの為にとったにんじんが「葉付きにんじん」として売り場に出ている場合があります。間引きされた物なので、葉は柔らかく炒め物やサラダなどで食べても美味しいだけでなく、ビタミンCやカルシウムなどの栄養素も豊富に含んでいます。
また2005年の研究でにんじんの葉のがん抑制効果が発表されました。もし売り場で見かけたら積極的に食べてみると良いでしょう。
ニンジンに含まれる代表的な栄養素であるβカロテンとビタミンC、それぞれ効果的に摂取する方法が異なります。
お肉やベーコンなどを入れたスープやカレーなどにすると、にんじんに含まれる水溶性も脂溶性もどちらの栄養素も余すことなく摂取することができます。
ただし、生食する場合、生のにんじんにはビタミンCを分解してしまうアスコルビナーゼを含んでいるので注意が必要です。
また冷凍するとβカロテンの量が増えると言われますが、代わりに食物繊維やビタミンCの効果は減少すると言われています。
ご自身に必要な栄養素に合わせて調理することをお奨めします。
新鮮なにんじんの選び方と保存方法をご紹介します。
にんじんは通常、7~10日程保存ができます。その際、にんじんの劣化を防ぐ為に、温度が一定の冷蔵保存が推奨されます。また湿度の変化にも弱いのでポリ袋や新聞紙で包んで保存してください。
中央アジアから東に西へとそれぞれ広がり、そのどちらも江戸時代に日本に入ってきて広く一般的な野菜になりました。
それは美味しい野菜というだけではなく、にんじんに含まれる栄養素によって「美容効果」「腸内環境改善」そして「がん予防」にも効果があるという様々な栄養効果も多大に影響を与えています。
是非とも毎日の食卓ににんじんを取り入れて、より健康により長生きしていきましょう。
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