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海のミルクの魅力とは?牡蠣の種類とその養殖法と健康情報

海のミルクと呼ばれる理由と牡蠣の種類

 牡蠣には亜鉛のようなミネラルビタミンB群グリコーゲンタウリンなどのアミノ酸が豊富で、その乳白色の姿と豊富な栄養から「海のミルク」とも呼ばれています。特に牡蠣の亜鉛の含有量は食品の中でトップクラスです。

 

 その歴史は古く紀元前にヨーロッパでは養殖が始まっていたそうです。日本の養殖は諸説ありますが16~17世紀に始まったといわれ、それまでは天然の牡蠣を楽しんでいました。養殖自体は遅かった日本ですが、縄文時代の貝塚から牡蠣の殻が出土していることから太古から日本でも牡蠣を楽しんでたことが分かっています。

 

 日本で流通している牡蠣には大まかに2種類に分類されます。

  • 真牡蠣:全国で養殖されていて流通している牡蠣のほとんどはこちらの牡蠣になります。夏に産卵期を迎えて栄養が卵に移ってしまい味が落ちるため、11~2月が旬と言われています。
  • 岩牡蠣:浅瀬で生育される真牡蠣と異なり、水深5~20メートルくらいの帯域の岩礁に生息していて、生育に4~5年程度かかります。ただ真牡蠣と異なり水温の上昇で一気に放卵せずゆっくり産卵する為、味が落ちにくく6~9月が旬と言われ「夏牡蠣」とも呼ばれます。それまで天然ものの岩牡蠣しかありませんでしたが、1992年(平成4年)に島根県隠岐の島西ノ島町で初めて養殖に成功しました。

 この2種類の他に、世界で食べられている牡蠣としてヨーロッパヒラガキやクマモトオイスター(養殖用に熊本近海の牡蠣をアメリカ西海岸に輸出した後、大人気になり「KUMAMOTO」と言われる高級ブランド牡蠣になりました)など様々な品種があり、日本は大ぶりの牡蠣を、海外は小ぶりの牡蠣を好む傾向があります。(全世界で400種以上の牡蠣があります)

 

左:真牡蠣 右:岩牡蠣

 

牡蠣の養殖

 日本の牡蠣養殖は室町時代である天文年間(1532~1554年)に安芸国(現:広島県西部)で小林五郎左衛門が養殖法を考案したという説と、江戸時代に入った寛永年間(1624~1643年)に仁保村渕崎(現:広島県南区仁保)で吉和屋平次郎が石蒔養殖やひび建養殖を開発したという説があります。ただその他にも同地区で養殖法についての逸話が残っていることから、この時期にこの広島県地区で盛んに牡蠣の養殖技術革新が進んだと考えられます。

 

 大正時代に入って現代の様にイカダにホタテの貝殻を吊るしたロープを沈める垂下養殖法が発明されると、それまでの養殖法では満潮線と干潮線の限られた水域でしか養殖できなかったのが、沖合でも養殖することが可能になり生産量が飛躍的に伸び、その後主流の養殖法になりました。

 

  • 石蒔養殖:干潟に石を蒔いて、その石に幼牡蠣が付着するのを待つ養殖法。
  • ひび建養殖:木や竹、網やすだれを干潟や浅海に設置し、そこに幼牡蠣や海苔の胞子が付着させて生育させる養殖法、設置した木などを「ひび」と呼びます。
  • 垂下養殖:夏の真牡蠣の産卵期にホタテの貝殻を吊るしたロープを海に沈め幼牡蠣が付着するのを待ちます。付着後しばらくそのまま生育し、生き残った強い牡蠣を沖合の養殖場へ運んで1年以上かけて生育させる養殖法。現在、主流の養殖法。

 

牡蠣の調味料

 牡蠣はその豊富な栄養素とうま味成分から調味料として加工されて広く使われています。その代表的な2つをご紹介します。

オイスターソース

 言わずと知れた牡蠣の調味料のオイスターソース。始まりは1888年に李錦記の創業者である李錦裳(リ・キンシェン)広東省で営んでいた料理店で、うっかり牡蠣を煮ていた鍋の火を消し忘れ、気が付いたら鍋に香り高い濃厚なうま味のソースが出来ていたが始まりです。

 ちなみにオイスターソースは牡蠣から自作することも可能です。生牡蠣を玉ねぎ、にんにくと一緒に調味料で煮た物をミキサーにかけて濾せばできます。ただし市販の物と違い出来たら冷蔵保存して1週間程度で消費する必要があります。(作成方法はこちらの記事では載せないのでご自身で検索してください)

 

かき醤油

 1994年に開かれた広島アジア大会において「広島県をアピールできる調味料が作れないか」という思いから株式会社アサムラサキが生み出した煮切り醤油。本醸造醤油に牡蠣のエキスとかつお節、昆布、椎茸などのうま味、みりん砂糖で甘みを足していて、かけ醤油はもちろんのこと、お吸い物の味付けや煮物の味付け、うどんや蕎麦などのつゆ作り、たまごがけご飯の味付けにも合います。

 

参照「株式会社アサムラサキ」

 

 

生食用と加熱用の違い

 品種の違いではなく同じ牡蠣です。違いは育てられている海域の違い。生食用の牡蠣にする上での注意することは、食中毒の原因になるノロウィルスや雑菌がないこと。その為、生活排水なども流れてくる河口付近の海域で育てられたものではなく、各県が定めた指定海域で育てた牡蠣しか生食用になりません。またその生食用の牡蠣も収穫後2~3日かけて体内をきれいに浄化します。方法として大量の海水を吸収してその中の栄養素で育つ牡蠣の特性を利用して、紫外線で殺菌したキレイな海水で体内の菌などを洗い流します。加熱用は調理の際の過熱で菌が死滅する為、収穫後きれいに水洗いされてすぐに出荷されます。

 加熱用の方が川からの栄養素も多い河口で育つ為、身が太っていて美味しいという説もありますが、食中毒を予防する観点からも、必ず中心部が85~90℃以上になった状態で90秒以上加熱して召し上がってください。

 

参照「農林水産省「ノロウィルス」

 

 

牡蠣の健康効果

亜鉛

 牡蠣は特に豊富に亜鉛を含む食材です。亜鉛には免疫機能の強化や傷の治癒を支援します。また、男性の性機能向上にも貢献し、舌にある味蕾という味を感じる器官にも重要な栄養素で不足すると味覚異常が起こったりします。このように適切な亜鉛摂取は健康に重要です。しかし、過剰摂取には注意が必要です。

 

鉄分

 牡蠣は鉄分を含み、鉄欠乏性貧血の予防に役立ちます。また、免疫機能の向上やエネルギー生産にも寄与し、健康的な成長と代謝を促進します。その他、神経系や筋肉の機能をサポートする鉄分も含まれており、多くの健康効果が期待できます。

 

ビタミンB群

 特に牡蠣に含まれるビタミンB12は血液内の赤血球のヘモグロビンを作るのを助けます。ヘモグロビンは酸素と結合して全身に酸素を運ぶ役割があります。これが不足すると貧血になってしまいます。ビタミンB12はそのような貧血を予防する効果が期待できます。

 

グリコーゲン

 牡蠣に含まれるグリコーゲンは、肝臓と筋肉に蓄えられるエネルギー源で、摂取すると素早くエネルギーに変わってくれます。また、安定した血糖値を維持し、体力の維持に寄与し、健康的な代謝を支援することにも期待できます。

 

タウリン

 牡蠣に含まれるタウリンは、心臓の健康を促進し、高血圧やコレステロールの管理に役立つ可能性があります。また、免疫システムの強化に寄与し、炎症を抑制する助けにもなります。牡蠣を摂取することでこれらの健康効果を得られるでしょう。

まとめ

 紀元前より人類に愛されてきた「牡蠣」。様々な栄養素が豊富な牡蠣ですが、その栄養素をより効率よく吸収するのにプラスした食材があります。それは「レモン」と「にんにく」。実は牡蠣に含まれる亜鉛や鉄分などのミネラルはなかなか吸収してくれません。そこでそれらミネラルを効率よく吸収する為にレモンに含まれるビタミンCやクエン酸が有効となります。またにんにくもビタミン類の吸収を高めてくれる効果が期待できます。

 食材を組み合わせることによって更なる健康効果を取り入れていきましょう。

 

 ただし、牡蠣には多くのプリン体を含んでいます。1日10個程度を目安に食べるようにしましょう。

 

城戸憲司

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