秋の果物の代表格である「柿」。その健康効果は様々で古くからアジアを中心に愛されてきた果物です。その健康効果は様々で、老化防止、高血圧予防、風邪予防、二日酔いにも効果があるタンニンと言う成分もあります。今回は記事を通じて、そんな柿の健康効果や歴史について詳しくご紹介していきます。
まず柿の原産地についてご紹介しましょう。柿の原産地については所説あります。日本でも縄文や弥生時代の遺跡から種が出土していることから日本原産という説もありますが、現在の研究では中国が原産という説が一番有力です。
生産量は中国(335万トン)を筆頭に、韓国(20万トン)中東のアゼルバイジャン(19万トン)日本(18万トン)ブラジル(17万トン)の順で収穫されています。
ブラジルでは第二次世界大戦前に導入されるも普及されなかったのが、日本人がブラジルに移民入植し、そこで渋抜き技術を広めてから栽培が広まったそうです(斉藤広志「ブラジルと日本人-異文化に生きて50年-」より)
海外では日本の様に硬い柿ではなく、ほとんどが渋柿なので、完熟させて渋みが抜けた柔らかい柿をスプーンで掬って食べています。
日本の最古の文献である「古事記」や「日本書紀」に柿の字を使った人名や地名が多くあることと、藤原宮(694~710年)の遺跡から多くの種が出土したことから、この時代には多く栽培されていたことが分かります。ただ、この時代の日本の柿は、世界の柿と同様に渋柿だけでした。
甘柿は鎌倉時代前期1214年(建保2年)に星宿山蓮華蔵院王禅寺(神奈川県川崎市麻生区王禅寺940)の地内の山中で見つかった「禅寺丸柿」が最初と言われています。この出来事は、その地域の名称「柿生(かきお)」の由来にもなりました。
その後、戦乱が収まった江戸時代になると、平和な世の中のお陰で様々な品種の研究や柿の渋みの抜き方、栽培方法の研究が進み、様々な品種が生まれ、明治以降に1000種ほどに分類されました。
基本的に全ての柿は未熟な時の柿は渋いです。ただ完熟が進むと種が無くても甘くなる「完全甘柿(富有柿や次郎柿など)」、種がある部分にはゴマ(タンニンが不溶化して黒っぽくなった)の周りが甘く、種がない部分は渋い「不完全甘柿(禅寺丸柿や筆柿など)」、種の有無に関わらず渋い「完全渋柿(平核無柿・刀根柿など)」に分類されます。
柿の渋みの原因は水溶性のタンニン(ポリフェノールの1種)です。渋柿をそのまま食べてしまうと、唾液に水溶性タンニンが溶け出して強い渋味を感じます。
柿の果実は収穫した後も呼吸しており、その呼吸を阻害すると、呼吸ができないストレスから実の中にアセトアルデヒドが貯まります、そのアセトアルデヒドとタンニンが酸化結合すると、唾液に溶ける水溶性から、唾液に溶けない不溶性にタンニンが変化し、渋みを感じなくなります。柿の皮を剥くことに寄って呼吸を阻害しますから、皮を剥いて干された干し柿は甘くなります、また二酸化炭素やアルコールを使っての脱渋も同じ原理です。
それなので渋抜きといっても、実の中にはタンニンが不溶性になって抜けずに残っています。唾液にタンニンが溶け出さないから甘さだけを感じているだけです。なお、甘柿はそもそもタンニンが少なく熟すとタンニンがゼロになります。
甘柿と渋柿のタンニン含有率
青柿 成熟果 甘柿 約0.3% 約0% 渋柿 約3~5% 約1~2%
参照「At persimmon-株式会社アットパーシモン「柿渋タンニンとは?」」
「柿が赤くなれば医者は青くなる」ということわざがあるくらいに栄養豊富な柿の健康効果をご紹介します。その効果は「老化防止」「高血圧予防」「風邪予防」「二日酔い防止」の4つです。
ところで余談ですが柿を「トマト」や「リンゴ」に変えて言う表現がありますが、それは「A tomato (An apple)a day keeps the doctor away(1日1個のトマト(りんご)は医者を遠ざける)」という英語のことわざを、元々あった柿のことわざにアレンジしたものです。元々は柿のことわざが最初でした。
柿に含まれるβカロテンは体内でビタミンAに変化します。ビタミンAには皮膚を健康に保つ効果が期待できる他に強い抗酸化作用があります。同じく柿に含まれるビタミンCにも抗酸化作用がある他に、コラーゲン生成を助ける効果もあります。それらの抗酸化作用によって、酸化ストレスから守ってもらえることによって、身体を若々しく保つことが期待できます。
柿には100g当たり170mgと豊富にカリウムを含んでいます。血圧は血液内のナトリウム濃度が高まると、それを一定にしようと水分を増やし、結果的に血管内の圧力が高まります。カリウムには体内で多くなってしまったナトリウムを排出してくれる効果があり、体内のナトリウム濃度が下がることによって、濃度を一定にする為に水分が減って血圧が低く安定します。
柿に含まれるビタミンCは白血球の働きを助ける効果があります。白血球は体内に侵入してきたウィルスや細菌を撃退する役目があります。その為、ビタミンCによって白血球の能力が高まっていると風邪を引きにくくなります。
柿に含まれる渋みの素でもあるタンニンにはアルコールの吸収を阻害してくれる効果と、アルコールの分解で発生する毒素のアセトアルデヒドも吸着して排出してくれる効果があります。(アセトアルデヒドとタンニンが結合しやすく、そのまま排出される為)
また柿に含まれているカタラーゼとベルオキシダーゼという酵素にはアルコールの酸化・分解を促進してくれる効果が期待できます。これらの効果に寄って二日酔いが予防されます。
タンニンは渋柿に多く含まれ甘柿には微量含まれます。二日酔い・悪酔い防止には渋抜きされた渋柿や干し柿をお酒を飲む前に食べる事が効果的です。
柿の二日酔い対策効果として、飲む前に食べれば、二日酔いの予防になりますが、実は二日酔いの時に柿を食べても、二日酔いによる体調不良を早く治すことが期待できます。
前述の通り柿に含まれる渋み成分タンニンは、アルコールを分解する時に出る毒素のアセトアルデヒドとくっつきやすく、そのまま排出してくれます。このアセトアルデヒドが辛い二日酔いの原因なので、柿を食べてタンニンが体内に入ると、体内のアセトアルデヒドと結合して排出してくれるので、早くつらい状況が改善するでしょう。もちろん飲み過ぎないことが、何より健康に良いのは忘れずに。
柿の学名は「Diospytos Kaki(神の与えた果物 柿)と言います。それに相応しい様々な健康効果が柿にはあります。10月26日は「柿の日」だったりします。これは奈良の法隆寺に正岡子規が訪れた時のことを思い出して書いた俳句に、ちなんで全国果樹研究連合会かき部会に寄って制定されました。(当時、正岡子規は病床に伏していたので、実際は行っていないという説もあり)
柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺
正岡子規が1895年(明治28年)10月26日に法隆寺に参詣したのが由来となっています。この有名な俳句に思いを馳せながら神の果物「柿」の恩恵をたっぷり食べて受けましょう。
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