1月7日に食べる「春の七草」の一つ「すずな(小菜)」とも呼ばれる蕪。冬なのに「春」と言われるのは「新年=新春」だから。春の七草を食べる風習は元々は古代中国から伝わった「人日の節句」で、「七種菜羹(ななしゅさいのかん)」と七種類の若菜を入れた汁物を食べて1年間の無病息災を祈って行われる行事で、それが日本に入ってきて「七草がゆ」の風習になりましたが、ただの風習ではなく、ちゃんと栄養効果のある食材だったりします。また蕪は日本人には馴染みの深い野菜で、大昔からありますが、その原産は日本ではありません。そんな蕪の歴史や健康効果をご紹介します。
蕪の原産地は南ヨーロッパである地中海からアフガニスタン辺りと言われています。ヨーロッパでは紀元前から栽培されていて、有名な童話の「大きなかぶ」はロシア民話です。またハロウィンの時にカボチャで作れているジャック・オー・ランタンは、元々は蕪で作られていました。
日本には弥生時代に中国もしくは韓国から伝来したと考えられ、日本で一番古い文献の一つである「日本書紀(720年)」にも持統天皇より五穀(米・麦・大豆・粟(あわ)・ヒエ)を補うのに栗や梨とともに蕪の栽培を推奨したことが書かれています。その後の万葉集(753年)に長忌寸意吉麻呂(ながのいみきおきまろ)の歌で「蔓菁(あをな)」と呼んで歌われていました。
古くから愛され栽培されてきた蕪、現在日本で栽培されている蕪はヨーロッパ型とアジア型の2体系あります。
写真:日野菜蕪
蕪はその根も葉も丸ごと食べられ野菜で、根にはほのかな甘みがあり、生食ではシャキシャキとした食感を楽しめ、煮れば滑らかな食感を楽しめます。葉も緑黄色野菜で煮て良し炒めて良しの食材です。蕪の5つの健康効果を順番にご紹介します。
蕪の根部に含まれるアミラーゼ(ジアスターゼ)にはでんぷん質の分解を助けてくれる酵素です。それによって胃腸での消化を効率よくしてくれます。またアミラーゼがでんぷん質の消化を助ける事のよって胃酸過多の予防も期待できます。
ただし、酵素は熱によって失活してしまうので、お漬物やサラダで摂取することによって効果が期待できます。
蕪や大根などアブラナ科の植物に含まれる辛み成分「イソチオシアネート」には大腸菌を死滅させるくらいの殺菌効果が期待できます。またこのイソチオシアネートは胃腸を刺激して胃液の分泌を促進したり、肝臓の解毒作用を活性化させたり、発がん性物質の毒性を抑制する効果も期待できます。
蕪には葉にも根にもカリウムが豊富に含まれています。カリウムは体内で過剰になった塩分由来のナトリウムを排出し、それによって体内の余分な水分を排出してくれます。体内の余分な水分が排出されることによって高血圧やむくみの改善に繋がります。
蕪の葉に含まれる鉄分や葉酸は、血液内の酸素を運ぶ赤血球を作るのにとても重要な栄養素です。鉄分は赤血球の主成分で、葉酸はその鉄分を赤血球にするのを助けます。また同じく葉に含まれるビタミンCは鉄分を効率よく体内に取り入れるのを助けてくれます。
これにより貧血を予防する効果が期待できます。
蕪の葉にも根にも豊富に食物繊維を含んでいます。食物繊維は腸内の善玉菌のエサになり、腸内の環境を整え、便通の改善が期待できます。
紀元前より人類に栽培され大切に食べられてきた蕪、日本にも弥生時代には入ってきていたと考えられ、日本最古の文献にも蕪についての記述があるくらい歴史のある野菜です。
優しく緻密な味わいの蕪ですが、そこには人類から長く愛食されてくるだけの様々な健康効果があります。煮ればとろみある料理になり身体を温め、生で食べればその酵素の効果を最大に活かすことができます。
蕪の旬は年2回、3~5月の春の蕪は柔らかさが特徴で、10~12月の秋の蕪は寒さに向けて甘くなっているのが特徴です。これから秋の蕪の旬が到来します。せっかくの旬の蕪を食べて悠久の昔から愛されてきた蕪の健康効果を取り入れていきましょう。
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