秋が近づき、チラホラ青果売り場にて生栗が陳列されるようになりました。日本や中国由来の天津甘栗は有名ですが、実は世界中で栗は愛されてきていました。今回は世界の栗事情と栗の健康効果について説明していきます。
フランスの「マロングラッセ」イタリアの「焼き栗」の屋台だ有名です。小ぶりで甘みが強いのが特徴です。中世の頃のイタリアでは栗を粉にしてパンを作っていたこともあったそうで、小麦の様に膨らまないけれど、栗が豊作であれば飢饉の恐れが減ると「栗の木を許可なく切ってはいけない」という法律もあったそうです。西洋では大航海時代にアメリカ大陸からジャガイモが入ってくるまでは栗も貴重な食糧源でした。
アメリカ大陸に自生していた栗。北はカナダの一部から南アメリカまで分布していたが、1906年頃に中国やヨーロッパから別の栗の木が輸入された際に「胴枯病」という植物の病気も入ってきてしまい、それに抵抗性の無かったアメリカ栗は全滅に近い被害を受けてしまった。
現在は、中国や西洋、日本の胴枯病に強い品種と交雑して胴枯病耐性のある品種を作り少しずつ回復しているそうです。
中国の河北省・河南省・四川省の他に韓国や北朝鮮でも栽培されています。粒が大きい山東栗と、日本人には馴染みの深い粒の小さな天津栗があります。中国栗の特徴として甘みが強く渋皮が剝きやすいこと、たんぱく質が多く含まれている為、熱を加えると栗の実が固くなり、割れにくく見た目がよくなるので市販の栗きんとんなどにも使われる栗の甘露煮には中国栗が使われることが多いです。
縄文時代の遺跡である三内丸山遺跡から炭化した栗が発見されたことから、縄文時代から日本人に食されてきた食材です。日本の栗は他の栗と異なり水分が多く、栗ご飯の様に炊く事に向いていますが、水分が多い分、身が柔らかいので焼き栗や栗きんとんの栗にはあまり向いていません。ただ昨今は「国産栗を使用」を売りにしている栗きんとんも出てきています。水分が多いのでもし焼き栗にするなら必ず切れ目を入れましょう、切れ目が無いと栗の実の中の水分が急膨張して破裂して火傷や怪我をする恐れがあるので、必ず切れ目を入れてから焼くようにしましょう。
栗に含まれるビタミンB1は糖質をエネルギーに変換してくれます。ビタミンB1の効果で全身にエネルギーが回る為、疲労回復に効果があります。糖質とは炭水化物のことなので、「栗ご飯」は非常に理に適った料理といえます。
栗には不溶性の食物繊維が豊富です。不溶性食物繊維は水に溶けない代わりに水分を吸収して膨らみ便の暈を増して腸を刺激し蠕動運動を促します。また乳酸菌やビフィズス菌などの善玉腸内細菌のエサにもなるので、腸内環境の改善に効果が期待できます。
栗にはカリウムが100g当たり420mgと豊富で高血圧を予防してくれる効果が期待できます。塩分過多になると血中のナトリウム濃度が濃くなりすぎるのを防ぐ為、血管内に水分がたくさん入って薄める結果、血液の総量が増えて血管内の圧力が高くなってしまいます。カリウムを摂取すると血中のナトリウムや老廃物を排出してくれて、結果、血液が薄くなり、濃度を調整するために水分が抜けて血圧が下がります。
栗には抗酸化作用のあるビタミンCが含まれています。ビタミンCの効果で細胞の酸化ストレスを軽減するだけでなく、皮膚の代謝や免疫にも良い効果があります。また栗の渋皮には「タンニン」というポリフェノールが含まれています。ポリフェノールも抗酸化作用があり、老化防止に効果が期待できます。タンニン摂取するのであれば栗ご飯ではなく渋皮も一緒に煮た「栗の渋皮煮」がお薦めです。
世界中で愛されてきた栗、国ごとに少しずつ特徴が異なっていたり、現在復活に向けて頑張っていたり事情は様々。
ただ、健康に良い栗の栄養素はどの国も一緒。疲労回復・腸内環境改善・高血圧の予防・抗酸化作用と老若男女問わず良い健康効果が栗にはあります。せっかくの栄養満点の栗を、秋の食卓に取り入れていきましょう。
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