椎茸:キシメジ科シイタケ属(英語:shiitake mushroom)
日本はもちろん、中国や韓国、東南アジアからニュージーランドにも分布するキノコです。英語でも「shiitake」と表記されています。
江戸時代には、コナラやシイの原木に傷をつけて椎茸の菌糸がついて生えてくるのを待つ「ナタ目法」という栽培が行われていました。昭和になって椎茸の菌糸を含んだくさび型木片を原木に打ち込んで栽培する「原木栽培」の技術が発展し、更に現在はおが屑や米ぬかなどを混ぜた培地に菌糸を植えて育てる「菌床栽培」が盛んになています。
菌床栽培のお陰でハウス内の温度や湿度を調整することに寄って1年中流通するようになった「椎茸」ですが、本来の旬は「春」と「秋」。寒い冬を越えた春に出回る椎茸の事を「春子」と呼んで寒さで身が締まっており、うま味も濃縮されています。対して秋に出回る「秋子」は香り高いと言われます。
椎茸は古来より「不老長寿の薬」と信じられ漢方にも取り入れられてきまいた。その効果は「エネルギー代謝」「骨を丈夫にする」「血液をサラサラにする」「免疫を向上させる」「整腸作用」の5つです。
椎茸に含まれるビタミンB1は「糖質をエネルギーに変換」する酵素です。ビタミンB1が身体にあると、摂取した糖質からエネルギーを作り出してくれて疲れにくい体になります。逆にビタミンB1が欠乏すると「倦怠感」「食欲不振」「手足のふるえ」など脚気の症状が出る場合もあります。
椎茸には吸収したカルシウムが骨に定着するのを助けるビタミンDが含まれています。ビタミンDとカルシウムをしっかり摂ることに寄って骨粗鬆症の予防に繋がります。
椎茸には「エリタデニン」という特有の化学物質が含まれています。このエリタデニンは血中のコレストロールを下げ、血流を改善してくれて血圧を下げてくれます。
椎茸や舞茸などに含まれるβグルカンという食物繊維は体内で働く「マクロファージ」や「キラーT細胞」などの免疫細胞を活性化してくれます。これにより病気やガンの予防に効果が期待できます。
椎茸などのキノコ類には豊富な食物繊維が含まれます。食物繊維は腸内にて善玉菌のエサとなり、腸内を善玉菌優位にしてくれます。また昨今の研究で幸せホルモンと言われる「セロトニン」のおよそ80%が腸内で作られていると言います。腸内を整えることによって、我々のメンタルの改善に良い影響を与えることも期待できます。
前述の「漢方に使われていた椎茸」は「干し椎茸」になります。中国では貝柱やフカヒレ、椎茸などを干すことに寄って栄養が増し、美味しく健康になれると「乾貨(Qiánhuò)」と呼び貨幣に並ぶ価値のある物として扱います。
実際、椎茸は生の状態ではほとんどないうま味成分であるグアニル酸が、干し椎茸にすることに生成されます。
ちなみに一般的に出回っている干し椎茸は以下の2種類です。
椎茸の笠が開いておらず丸々としていて肉厚のもの。見た目の良さから贈り物として珍重されていて、名前の通り冬場に取れる椎茸に多いとされる。
椎茸の笠が開いていて平べったいもの。笠が開いている分うま味成分であるグアニル酸がたくさん出てくれるので出汁を取るのに向いている。比較的安価。
ただ形の違いでどちらも同じ「干し椎茸」です。肉厚な食感を楽しむなら「冬菇」。出汁を取ることを優先するのであれば「香信」になります。
上記の5つの健康効果の他に6つ目の健康効果として「減塩」にも椎茸が使えます。この場合、生椎茸ではなく、干し椎茸のうま味成分である「グアニル酸」を料理に使うことに寄って、使う塩分の量を減らすことが出来ます。
ただ、干し椎茸を戻す手間が大変でしたら、手軽に使える「椎茸茶」を利用するのも一つの方法です。粉末や顆粒にした干し椎茸に塩を添加した物なので、味つけが少し足らない時に重宝します。ただし、塩分が入っているので使う時は控えめに。
余談ですが、調理の時に切り落とし使わない「椎茸の軸」を干しておいて出汁を取るのに使うことはできます。切り落とした軸をザルなどに乗せて天日干しすればOK。陰干しでもグアニル酸は出ますが、天日干しにすると椎茸(軸)に含まれるビタミンDの量が増えるので天日干しをおススメします。
一年を通して味わえる椎茸を紹介しました。味を楽しむなら冬を越えた「春」、香りを楽しむなら取れたての「秋」、そしてうま味と栄養成分をたくさん摂るのであれば「干し椎茸」でした。
干し椎茸の使い方は薄い物で4時間、厚い物で12時間から1日、冷水に漬けて戻します。もし時間が無いようでしたらぬるま湯に入れて常温放置で2~3時間で戻ります。戻した椎茸は具材として、戻すのに使った水(もしくはぬるま湯)は出汁として使えます。
不老長寿の薬ではないですが、健康を維持してくれる効果はたっぷりある椎茸。これを機会に上手に料理に取り込んで、更に健康的な食生活を目指しましょう。
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