8月になって青果売り場に「梨」が並び出しました。夏から秋にかけてみずみずしく爽やかな甘み、そして独特の香りは、多くの人々を魅了します。梨の品種によって異なる風味や食感が楽しめるため、幅広い好みに合わせて楽しむことができます。甘味としての楽しみの他に、健康に良い成分が豊富に含まれている果物だったりします。梨は、日本を含む世界中で愛される美味しい果物です。
日本の「和梨」中国の「中国梨」西洋の「洋ナシ」とありますが、全て中国の「ヤマナシ」が原種と言われています。古くは弥生時代(1世紀頃)の登呂遺跡などからからヤマナシの種などが見つかっていて、当時の人にも食べられていたと思われます。おそらく稲作と一緒に中国から伝来したものと推測されます。ただ、この頃の原種のヤマナシは硬く酸味が強い上に渋みもあるので、好んで食べられていた訳ではないと思いますが、人が住んでいた集落周辺にしかヤマナシの痕跡がないことから、間違いなく栽培されていたと思われます。
日本の文献で最初に「梨」について出てくるのは、持統天皇が693年に五穀(米・麦・あわ・きび・豆、穀物の総称)と一緒に「桑・苧(カラムシ)・栗・蕪・そして梨」の栽培するように推奨したと「日本書紀」に記載されています。
大きな戦が無くなった江戸時代になると一気に栽培が活性化され100種類を超える和梨が栽培されていたそうです。江戸幕府の老中 松平忠信(1758-1829)が残した「狗日記」には「船橋のあたりいく。梨の木を、多く植えて…」と書かれており、現在も梨栽培が盛んな市川から船橋周辺は、当時から梨栽培が盛んだったことを覗えます。
明治以降には、現・松戸市の松戸覚之助によって明治21年(1888)に「ニ十世紀」が、現・日ノ出町の当麻辰次郎によって明治26年(1893)に「長十郎」が発見された。特に長十郎は人気を博し大正初期には全国80%のシェアを占めていた。
その後、長く二十世紀と長十郎は愛されていたが、昭和34年(1959)に「幸水」が、昭和40年(1965)に「新水」が、昭和47年(1972)に「豊水」が農研機構果樹研究所による交配に寄って開発・品種登録されました。
その後も様々な梨が品種改良され、新たな「梨」の品種が生まれています。
和梨は大別すると、表皮が黄緑色がかっている「青梨(二十世紀など)」と、表皮が赤みがかった黄色の「赤梨(幸水・豊水など)」があります。
今もまだ多くの品種改良が行われているはずです。
水分が多いので栄養素が少なく感じる梨ですが、実際は様々な栄養素が含まれています。
上記の栄養素の他に、梨には「プロテアーゼ」というたんぱく質をしてくれる消化酵素があり、すりおろした梨を肉に漬け込んで焼肉の下味を漬けると柔らかくしっとりした一段上の味付けをすることができます。
また肉類などたんぱく質をたくさん食べた後にデザートで梨を食べれば、消化を助けてくれます。
梨は単なる美味しいフルーツ以上のものです。そのみずみずしい甘さと爽やかな香りは、夏の終わりから秋にかけての季節を彩ります。様々な品種があり、それぞれ独自の風味と食感を提供してくれるため、多くの人々に愛されています。しかし、梨の魅力はその味だけに留まりません。カリウム、アスパラギン酸、クエン酸、石細胞、ソルビトール、ポリフェノールなど、健康に良い成分を豊富に含んでおり、高血圧の改善や疲労回復、消化の促進などに効果があるとされています。料理においても、プロテアーゼというたんぱく質を分解する消化酵素が含まれているため、肉の下味にすりおろした梨を使うことで、より柔らかく、しっとりとした食感を得ることができます。デザートとしても、たんぱく質豊富な食事の後に食べると消化を助けてくれます。梨はその美味しさだけでなく、栄養面や料理への応用面でも多くの可能性を秘めている、まさに多面的な果物です。
これから旬を迎える梨、そのまま食べて良し、料理に利用して良し。大いに楽しんでいきましょう。
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